読書日和

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「ひらいて」綿矢りさ

2012-08-04 15:21:37 | 小説
今回ご紹介するのは「ひらいて」(著:綿矢りさ)です。

-----内容-----
ひらくことは、生きてるあかし―。
怖れを知らない女子高生が、哀しい目の男子に恋をした。
やみくもに、自分本位に、あたりをなぎ倒しながら疾走する、女子高生の初めての恋。
熱い思いは勢いあまり、彼の恋人に向けられて……。
人間の根源的な愛を問う最新長編。
大江健三郎賞受賞後第一作!

-----感想-----
綿矢さんの文章は、一文一文大事に読みたくなる、そんな文章です。
「おおかみこどもの雨と雪」「サマーウォーズ」という表現力よりスピード感と爽快感重視の小説を読んだ後だけに、繊細な表現力を用いる綿矢さんの文章はまさに「文学」といった感じ。
一気に王道文学路線に引き戻されました^^

今回は高校が舞台だけに冒頭の何ページか、爽やかさを感じました
序盤はどこか「蹴りたい背中」を思わせるものがありました。
ただしそれは序盤だけの話で、途中からは「蹴りたい背中」とは全く違う雰囲気の物語になっていきました。
意中の彼「西村たとえ」の心をどうしても自分に開かせたい主人公「愛」の、非常に濃くてわがままな物語です。

「たとえ」が東京の最難関大学に行ってしまうと知った愛。
「じゃあ、たとえの彼女になればいい。そう、欲しければ掴むまで」
こんな感じで何としても彼を手に入れようとしていて、これはちょっと怖いなと思いました

『私の笑顔はちょうど、いま穿いているソックスの刺繍。表側の真白い生地には、四つ葉のクローバーの刺繍が施されているが、裏返せば緑色の糸がなんの形も成さず、めちゃくちゃに行き交い、ひきつれているだけ』
これは綿矢さんらしい表現だなと思います。
高校生くらいの年代の、特に意味もなくみんなで笑いあったりするときの心境がうまく表現されています。

今回は序盤は綿矢さんらしい小説でしたが、途中から思いもよらぬ展開になりました。
何というか、三浦しをんさんの「月魚」であった展開の女子バージョンといった感じです。
「たとえ」には「美雪」という彼女がいるのですが、愛の激しい嫉妬がこの美雪に向けられます。
そして思いも寄らぬ行動に。。。
自分が好きになった男に彼女がいたからといって、まさかあんな手段に打って出るとは…
今までの綿矢さん作品とは違う展開に衝撃でした。

しかしあの手この手で「たとえ」と「美雪」の中を引き裂こうとするが上手くいかない愛。
やがてそんな醜い自分自身にもうんざりしていきます。
また、あまりに強引に「たとえ」と「美雪」の仲を引き裂こうとした結果、結局二人両方から心を閉ざされてしまう愛。
自業自得とはいえ、このとき愛も「私にむかってあんなにも開かれていた、信頼を寄せていた心が、閉じてしまったのが、悲しい」と、一度は仲良くなった美雪から完全に心を閉ざされたことをひどく悲しんでいました。

ボートから落とした手鏡のコンパクトが、湖の底へゆっくりと沈んでゆく。
鎖をきらめかせ、小さなあぶくを吐きだしながら、底に近づくにつれ薄暗くなる水中を、落ちてゆく。
音もなく底にぶつかると、白い砂が舞い上がり、その拍子に銀色の蓋の留め金が開く。
内側の鏡が水中に差す陽を一瞬とらえて反射し、なにかの合図みたいにきらりと光ったあと、横向きになり、砂にうもれる。
舞い上がった砂も沈み、水は澄み、しずかで、永遠にそのまま。


この文章は秀逸。
綿矢さんらしさが凝縮されている気がします。
自身の暴走により何もかも終わってしまった愛の、絶望的な心境が湖の底に沈んでゆくコンパクトとして描き出されていました。

中盤から後半にかけての主人公の暴走と転落ぶりはどこか「夢を与える」の夕子に通じるものがありました。
ただし、転落したままでは終わらないのが今回の作品。
終盤は再び生気を取り戻した愛の違う意味での暴走によってクライマックスへと突っ走っていきます。
内容紹介の欄にもあるように、「あたりをなぎ倒しながら疾走する」感じですね。
怖れを知らない、10代の女子高生の疾走は凄まじい、そんなことを感じる最後の終わり方でした。


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メダルラッシュ続く

2012-08-04 11:05:42 | スポーツ
連日日本人選手のメダルラッシュが続くロンドンオリンピック。
競泳では男子200メートル背泳ぎの入江陵介選手、女子200メートル平泳ぎの鈴木聡美選手がそれぞれ銀メダルを獲得。
二人とも今大会二つ目のメダル獲得です。

そしてバドミントン女子ダブルスでは藤井瑞希選手、垣岩令佳選手のペアが準決勝に勝ち、銀メダル以上が確定しました。
バドミントンでのメダル獲得は日本史上初めてとのことです。
北京オリンピックでのオグシオペアでもベスト8でしたし、これは本当にすごいことですね。
ここまで来たらぜひ金メダルを取ってほしいです

柔道では競技最終日の昨日、女子の78キロ超級で杉本美香選手が銀メダルを獲得。
今大会なかなか金メダルが取れない日本勢でしたが、この経験を生かしてまた次のオリンピックに向けて頑張っていってほしいですね。

アーチェリーでも昨日の男子個人決勝で古川高晴選手が銀メダルを獲得。
この競技での銀メダル獲得はアテネ大会以来8年ぶりとのことです。
注目度の高い花形競技ではありませんが、この銀メダル獲得はまさに努力の賜物。
本当におめでとうございます

そして競泳のラストを飾る400mメドレーリレーの予選で、日本は男女共に決勝に進みました。
男子は入江陵介選手、北島康介選手、松田丈志選手、藤井拓郎選手の4人が泳ぎ、全体の3番目のタイムで決勝に進出。
女子は寺川綾選手、鈴木聡美選手、加藤ゆか選手、上田春佳選手の4人が泳ぎ、全体の2番目のタイムで決勝進出となりました。
男女ともに今大会でのメダリストを擁しているのが心強いです。
メダルの期待もかかりますし、ぜひ決勝でも頑張ってほしいと思います

そしてそして、サッカーの女子ではなでしこジャパンが大儀見選手、大野選手のゴールでブラジルに2-0で勝ち、2大会連続の準決勝進出を決めました。
試合ではブラジルの猛攻に遭ったようですが、それをしっかり守っての完勝、見事です。
ぜひこの勢いで決勝まで突き進んでいってほしいと思います

というわけで、中盤を迎えたロンドンオリンピック。日本勢は金メダルこそ二個ですが、メダルの総数は中国、アメリカに次ぐ第三位と相当なものです。
これからも日本勢のメダル獲得を期待したいと思います