読書日和

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「フリーター、家を買う。」有川浩

2013-08-23 23:37:16 | 小説
今回ご紹介するのは「フリーター、家を買う。」(著:有川浩)です。

-----内容-----
就職先を3ヵ月で辞めて以来、自堕落気ままに親のすねを齧って暮らす”甘ったれ”25歳が、母親の病を機に一念発起。
バイトに精を出し、職探しに、大切な人を救うために、奔走する。
本当にやりたい仕事って?
やり甲斐って?
自問しながら主人公が成長する過程と、壊れかけた家族の再生を描く、愛と勇気と希望が結晶となったベストセラー長篇小説。

-----感想-----
この作品は2010年秋にテレビドラマ化されました。
当時は少し興味を持ったもののドラマも見ず小説も読まなかったのですが、小説が文庫化されたのを見て興味を持ち、ついに手に取って読んでみました

主人公は武誠治、25歳。
大学を卒業して就職したものの、会社に馴染めず三ヶ月ほどで辞めてしまい、以後は再就職出来ずにずっとフリーター生活。
父の誠一は誠治が三ヶ月で会社を辞めたことに激怒し、毎晩大喧嘩、以来関係は悪化。
母の寿美子はそんな二人を見ておろおろ青ざめるばかりです。

そんなある日、母の寿美子に異変が…
実は誠治がまだ幼い頃から近所の人達の陰湿ないじめに遭っていた寿美子。
今までは家族にも言わず一人で耐えていましたが、とうとう限界が来てしまいました。
家族の中で唯一寿美子がいじめに遭っていることに気付いていたのが誠治の姉の亜矢子で、亜矢子が家に居た頃はまだ良かったのですが、その亜矢子も3年前に名古屋に嫁いでしまいました。
唯一の理解者も居なくなってしまい、追い詰められた寿美子。
徐々に精神的に参ってしまい、重度の鬱病を発症してしまいました。

酷いのが父の誠一で、妻の病気に全く理解がなく、「弱いからそんなことになるんだ」などと言って真剣に向き合おうとしません。
おまけに酒癖も悪く、かなりのダメ親父ぶりでした
誠治のほうも今までずっと家に居て脛をかじり続け、寿美子に暴言ばかり吐き、病気には全く気付きもしませんでした。
そんな時寿美子の異変を察知して家に帰って来た亜矢子が、寿美子の惨状を見て誠一と誠治に大激怒。
特に誠一への怒りは凄まじく、誠一が会社から帰ってきたその夜は修羅場になっていました。

さすがに誠治も寿美子の姿を見て「今のままでは駄目だ」思い、一念発起
夜は給料の高い道路工事のバイトをし、昼間は寿美子の世話をしつつ就職活動。
やがて道路工事のバイトが長く続いていることから現場作業長兼社長の目に留まり、正社員としての入社を打診される誠治。
最初の会社を三ヶ月で辞めてから全く就職出来ずにいた誠治に、ついにチャンスが巡ってきました。

会社名は「大悦土木株式会社」と言って、そこに入社してから父の誠一との関係も結構良くなっていったような気がします。
会社のこれからのために必要ということで誠治が簿記検定を受けることになって、父の誠一が会社では「経理の鬼」と呼ばれて簿記検定一級を持っていることから、家では誠治のために勉強を教えたりもしていました。
最初の頃のダメ親父ぶりからするとだいぶ進化したのではないかと思います。
寿美子の体調は良くなったり悪くなったりで一進一退な感じですが、誠治の就職が決まったりと明るい材料が出てきてこちらも良化が見られていました。

そこで出てくるのがタイトルの「フリーター、家を買う」。
本格的に寿美子の体調を治すには今の家から出て環境を変えるのがベストで、誠治は新しい家の購入を検討しています
しかし序盤ではかなりのダメ主人公だった誠治が本気で家の購入を検討するようになるとは、と何だか感慨深かったです。
これはたしかに「再生」の物語だなと思います。
誠治が再生し、誠一も再生し、寿美子もおぼろげながらも回復の兆しが見えてきました。

そして誠治の序盤からの成長ぶりが印象的でした。
読み終わってからもう一度冒頭を読んでみるととても同じ人物とは思えないです(笑)
最初のダメぶりが酷かっただけに、立派な社会人となってちょっと眩しいくらいです
一度は壊滅しかけていた家族ですが、気持ちを入れ替えて復活した誠治が居ればきっと大丈夫なのではと思いました


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