なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

脳梗塞

2024年11月23日 | 脳神経疾患

 11月10日(日)は日直で、その日の当直は腎臓内科の若い先生だった。11日(月)の午前中に、「やっぱり脳梗塞だった」という声が聞こえた。同量のさらに若い先生に解説していた。

 60歳代半ばの女性が10日午後7時に当院救急外来を受診した。その日の昼(午後0時)から右半身のしびれを自覚していた。

 5年前に右上肢のしびれで地域の基幹病院(整形外科だろう)を受診して、頸椎ヘルニアといわれたという既往がある。ただしその時より症状は強く、その時は右下肢のしびれはなかった。

 意識は清明でバイタルはまったく異常がない。右半身の麻痺があるかどうかだが、わずかに右上下肢で麻痺があると判断していた。右上肢のバレー徴候で第5指徴候(右第5指が離れる)があり、右下肢の軽度の動揺性があると記載している。

 頭部MRIの拡散強調画像で、左延髄のわずかな高信号域とADCで同部位の低信号がある、とみていた。

 脳梗塞(左延髄梗塞)として基幹病院に紹介した。先方の再検で脳梗塞が確定したと報告が来た。「お見事でした」、なのだった。

 

 放射線科の読影レポート(遠隔診断)では、MRIで「新規病変なし(脳梗塞は認めない)」となっていた。(時々読影結果に問題のある先生)

 

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精巣上体炎

2024年11月22日 | 泌尿器科疾患

 11月21日の午前1時過ぎに60歳代前半の男性が、睾丸痛で救急外来に救急搬入された。当直は小児科医(当院小児科は外来だけで入院はとらない)だった。

 ふだんは、前立腺肥大症で県庁所在地の総合病院泌尿器科に、心房細動で市内の循環器科クリニックに通院している。1週間前から睾丸の違和感があったらしい。前日(20日)の午後から睾丸(右側)が腫脹・熱感・疼痛が出現して、体温も38℃と上昇した。

 21日に泌尿器外来の予約があったためか、痛みを我慢していたが、耐えきれず救急要請した。経過と所見からは精巣(睾丸)の捻転ではなく、精巣上体炎が疑われた。腫脹した睾丸の大きさを6×8cmと記載していた。

 ジクロフェナク座薬(50mg)挿入と抗菌薬投与(セフトリアキソン1g)を行って、症状は搬入時より軽減した。帰宅してその日予約のある泌尿器科外来受診となった。

 睾丸痛(急性陰嚢症)は精巣捻転と精巣上体炎の鑑別とよく救急の本にある。精巣捻転疑いで受診した小児を泌尿器科へ紹介したことはあるが、精巣上体炎は見たことが1例くらいあったかなかったか記憶にない。

 精巣上体炎の治療は抗菌薬投与になる(と鎮痛薬)ようだ。性感染症からの波及の可能性があれば、その精査・治療になる。

 睾丸痛は小児でみるので、小児科医は案外得意なのだろうか。21日は当院も泌尿器科外来(非常勤)があるので、そちらに回せると思って受けたのかもしれない。

 

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水疱性類天疱瘡

2024年11月21日 | 皮膚疾患

 11月14日(金)、全身に皮疹のある50歳代前半の男性が皮膚科入院となった。紅斑と水泡があり、薬疹・多型滲出性紅斑・天疱瘡などが疑わるそうだ。

 尋常性天疱瘡のマーカーである抗デスモグレイン1抗体・抗デスモグレイン3抗体と、類天疱瘡のマーカーである抗BP180抗体が提出された。結果は抗BP180抗体が陽性で、水疱性類天疱瘡と診断された。プレドニン30mg/日で治療開始となっていた。

 この患者さんは糖尿病で市内のクリニックに通院している。処方はエクメット配合錠HD2錠分2で、HbA1c6.3%と血糖コントロールは良好だった。

 プレドニン開始で食前血糖が250mg/dl~400mg/dlと上昇して、単なるヒューマリンRのスケール対応では間に合わないため、内科に血糖コントロールの依頼が来た。

 エクメットはDPP4阻害薬エクアとメトホルミンの合剤で、DPP4阻害薬は類天疱瘡の原因になる可能性があり、中止された。(メトホルミン単剤にして継続)皮膚科的にはDPP4阻害薬による天疱瘡は特徴があり、この患者さんは違うそうだが、それで処方継続とはならない。

 初期量(30mg/日)はどのくらい継続されてから漸減が始まるかと訊くと、「勢いが治まるまで」ということだった。漸減中止になることもあるが、維持量継続になることもあり、経過をみないとわからない。

 インスリン強化療法を初期量(ヒューマログはスケール、トレシーバは固定)で開始して、血糖をみて漸増とした。年齢的にはインスリン注射は習得できるだろう。

 病室にその旨を伝えに行ったが、急性期の皮疹が広がってまだ痛々しかった。皮疹を避けてのインスリン注射になる。

 

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脳梗塞

2024年11月20日 | 脳神経疾患

 11月18日(月)に市内の整形外科クリニックから右半身脱力(不全麻痺)の80歳代前半の男性を紹介したい、と連絡が入った。普段は隣町の内科医院に高血圧症・糖尿病で通院している。その整形外科にも定期的に通院していた。

 発症は11月15日(金)の昼頃で、ふらついて転倒したそうだ。右半身の脱力(不全麻痺)があった。そのまま様子をみていたらしい。つかまり歩行はできて、そのうち慣れて足を引きずって歩行できた。箸を使うのが不自由だった。

 その日は整形外科で診る病気と思って受診していた。妻(要介護)と息子の3人家族だが、別居の娘さんが連れて来ていた。

 意識は清明で軽度の脱力がある(MMT4)。感覚障害はなく、頭痛・嘔気はなかった。脳梗塞のようだ。

 月曜日はMRI検査が混んでいる。連絡すると午後4時になりますということだった。日数的には頭部CTでも所見が出るだろう。CTで左放線冠に梗塞巣を認めた。ラクナ梗塞になる。

 4日目でいまさらという気もしたが、入院治療はどうかと勧めた。本人は嫌がっていたが、娘さんの説得で入院になった。入院後に頭部MRIも行った。

 場所的にはちょっと病変が進むと完全麻痺にもなる部位だった。経過をみないと症状がどこで固定するかわからない。抗血小板薬とエダラボンで治療を開始した。翌日には症状が軽減したが、自然経過なのだろうか。

 

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直腸癌

2024年11月19日 | 消化器疾患

 11月19日地域の基幹病院消化器内科から直腸癌の60歳代半ばの男性が転院してきた。

 11月8日(金)の夜間に便秘・腹部膨満・食欲低下で当院の救急外来を受診している。当直医は外部の病院の先生(バイトの外科医)だった。

 腹部単純X線で著明なニボーを認めて、誰が見ても腸閉塞だった。腹部CTで大腸が拡張していて、直腸に狭窄部とその口側の拡張を認めた。直腸癌による狭窄と診断していた。当院では対応できないので、基幹病院に搬送した。

 搬送後すぐに直腸ステントを留置したそうだ。腸閉塞はうまく解除された。当院の単純CTではわかりにくいが、造影CTでは多発性肝転移もあった。

 診療情報提供書によるとアルコール依存症と著明なるい痩があり、ADLは介助で車椅子移乗程度のため、治療適応なしと判断された。緩和ケアの継続をお願いしますという内容だった。

 妻子はいないが、親族と同居している方だった。リハビリをして、トイレ歩行できれば、いったん退院にできるかもしれない。地域包括ケア病棟で受けたので、入院期限60日になる。越える可能性があると事務には伝えた。

 

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多発性骨転移

2024年11月18日 | 消化器疾患

 11月15日(金)に泌尿器科の先生(非常勤)から相談された。患者さんは、多発性骨転移の80歳代前半の男性だった。

 右下腹部痛(チクチクする痛みと)で内科外来を受診した。腹部CTで特に所見はなかった。前立腺肥大症があり、担当した内科の先生は泌尿器科に紹介した。

 泌尿器科で検査しているうちに、血清PSA値は正常域だったが、骨条件でCT画像を見ると、脊椎(椎体)に多発性に転移巣(造骨性)を認めた。

 内科に戻されて内臓癌の腫瘍マーカーを測定すると、CEA 123.1・CA19-9 >12000と腺癌のマーカーが異常高値だった。造影CTでは胃癌・大腸癌・胆道系癌は指摘できないが、膵頭部にIPMN(膵管内乳頭粘液性腫瘍)を示唆する病変を認めた。IPMNから膵癌が出ていれば腫瘍マーカーの所見と合うか。原発巣が小さくて、転移巣が目立つ形?。

 肝転移・肺転移は画像上認めない。炎症反応は陰性で肝機能検査は骨転移を反映してALPのみが高値だった。

 内科の先生はがんセンター消化器内科に紹介した。返事はあっさりしたもので、「検査としては超音波内視鏡になるが、高齢で危険があり、しないことになった。」というものだった。治療についての記載はなかった。

 前立腺肥大症の治療は継続しているので、その日患者さんが泌尿器科外来を受診した。内科医の外来予約もあったが、泌尿器科医は(訊きやすい当方に?)どうにかならないのかと訊いてきた、という経緯だった。

 超音波内視鏡はできると思うが、それだけでは診断がつかないので、FNA(超音波内視鏡ガイド穿刺)の適応はないということなのだろうか。抗癌剤治療は組織がないのと、年齢の問題で行われないか。

 泌尿器科の先生から、PETはどうですかと訊かれた。(依頼するとすればガンセンターではない、他の病院になる。)侵襲はないのでやって悪くはないが、原発巣が小さいと所見が出るかわからない。そもそも治療に結びつかなければ高額な検査をする意味がない。

 

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RSウイルスワクチン

2024年11月17日 | 感染症

 RSウイルスワクチンも2種類出ている。RSウイルスによる下気道感染症を80%くらい予防するそうだ。また妊婦の接種で新生児・乳児の重度のRSウイルス感染症を80%程度予防するという。

 ただ、なかなかの値段だった。長期の予防効果や、短期間では特異的な副反応はないとされるが、またよくわかったいない。接種が進んである程度のデータが出るまで待ってもいいか。

 コロナ前は、孫からうつった高齢者のRSウイルス感染症の入院がぽつぽつあった。細気管支炎で、臨床的には喘息重積発作のような病状になる。酸素吸入、二次性細菌性肺炎の予防(併発)に対する抗菌薬、喘息治療の準じたステロイドで治療を行った。

 

 
商品名 アレックスビー®筋注用 アブリスボ®筋注用
予防できる病気 RSウイルス感染症 RSウイルス感染症
ワクチンの種類 不活化ワクチン 不活化ワクチン
定期/任意 任意接種
・60歳以上の成人
任意接種
・妊娠24〜36週の妊婦
・60歳以上の成人
接種回数 1回 1回
接種量・接種方法 0.5ml 筋肉内接種 0.5ml 筋肉内接種
費用 1回約25000円
(施設により異なる)
1回30000〜38000円
(施設により異なる)

 

 
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新型コロナワクチンの効果

2024年11月16日 | COVID-19

 倉原優先生のYahoo newsに「いま接種されている新型コロナワクチンは、冬に流行する変異ウイルスに効くのか?」が載っていた(11月6日の記事)。

 現在定期接種で使用されているのは、JN.1対応ワクチンだが、「現在流行しているKP.3にも今後流行するXECにも中和抗体価は十分達成される」ということだった。

 現在外来では、もっぱらインフルエンザワクチン接種をしているが、新型コロナワクチンも併せて受けたいという高齢者もいて、同日接種している。当院の新型コロナワクチンはファイザーのmRNAワクチン・コミナティを使用している。

 外来の高齢者にコロナのワクチンの通達が来ているかと訊くと、来ていないと答えたりして、接種者は少ない。

 当院の皮膚科の先生は、「先生(当方)が打つなら打ちます」ということで新型コロナワクチンを接種した。費用は15300円。この先生は注射局所が少し腫れるそうだが、全身性の副反応はない(うらやましい)。

 費用が2000~4000円(自治体により違う)の高齢者でも接種者が少ないと、15300円かかる64歳以下の人たちはあまり受けないのだろう。

 

 Yahoo newsの忽那賢志先生と倉原優先生の記事をずっと見ていたが、一時アクセスできなくなった。Yahoo newsのエキスパートのところに変更になっていたので修正してまた見られるようになった。

 

図2.JN.1対応ワクチンの効果(参考資料4より引用)(NT50:ウイルスの感染性を50%阻害する血漿の希釈倍率を表す中和抗体価の指標)
図2.JN.1対応ワクチンの効果(参考資料4より引用)(NT50:ウイルスの感染性を50%阻害する血漿の希釈倍率を表す中和抗体価の指標)
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インフルエンザ診療ガイド

2024年11月15日 | 感染症

 日本医事新報社から毎年11月に「インフルエンザ診療ガイド」が出ている。2019年まではずっと「インフルエンザ診療ガイド2019-2020」だった。インフルエンザは年を跨いで流行するため(前年の冬から翌年の春まで)、2019-2020シーズンと表記する。

 2020年は「新型コロナウイルス感染症流行下の インフルエンザ診療ガイド2020-2021」になった。2021年と2023年は。「インフルエンザ/新型コロナウイルス感染症診療ガイド2021-2022、2022-2023」。

 2023年は新型コロナウイルスが5類になって落ち着いたと判断したのか、また「インフルエンザ診療ガイド2023-2024」に戻っていた。ただし内容の1/3は新型コロナになっている。

 2024年も同じかと思ったら、「インフルエンザ・COVID-19(新型コロナウイルス感染症)・RSV(RSウイルス感染症)診療ガイド2024-2025」になっていた。

 確かにRSウイルスワクチンができたのはトピックではあるが、なんだかタイトルが迷走している。2023年にタイトルからCOVID-19を抜いたら売り上げが落ちたのだろうか。

 

 昨年編著者の菅谷憲夫先生は、小児への投与が好ましくないゾフルーザを小児科学会が擁護する記載をしているのを批判していた。 

 経鼻弱毒生インフルエンザワクチンは感染予防効果が低く、A(H1N1)pdm09に効果がないそうだ。(米国では使用しない勧告もでている)今年は著者の菅谷先生が、それを小児科学会が擁護しているのを批判している。

 巻末のQ&A「マスク・手洗い・うがい、種々の室内空気感染対策のインフルエンザやCOVID-19に対する予防効果について」では、引き続き仙台医療センターウイルスセンター長の西村秀一先生が「西村節」で記載している。

 学会ににらまれても気にしない人たち?。

 

インフルエンザ・COVID-19・RSV診療ガイド2024-25

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肺癌の転移・播種

2024年11月14日 | 呼吸器疾患

 11月12日(火)の午後にCVカテーテル挿入のために放射線科に行った。ちょうど造影CTを行っていて、肝臓内に多発性腫瘤(転移)があった。

 内科外来からのオーダーかと思ったが、市内のクリニックからの造影CT依頼だった。画像だけの依頼なので、撮影後は画像をCDに入れて依頼先にお返しするだけになる。

 患者さんは70歳代半ばの男性で、依頼内容は「最近胸が苦しいという訴えで胸部X線検査を行った。胸水貯留と左横隔膜挙上を認める。左上腹部腫瘍の疑いがある。」というものだった。

 当院では胸部単純X線を行っていない。通常のX線撮影でどこまでわかるかだが、CT画像から推定すると、良く見れば左肺門の腫瘤が指摘できるかもしれない。左胸水貯留からは通常は肺炎・胸膜炎を疑うところだが、発熱がないことから悪性腫瘍を疑ったということらしい。

 造影CTの結果は、「左肺門部癌があり、胸膜播種・胸水貯留・多発性肝転移を認める」だった。放射線科の読影レポートは遠隔診断で数日かかるが、その日は週1回放射線科医が病院で直接読影する日に当たっていて翌日には読影レポートがFAXで送られた。

 おそらく地域の基幹病院かがんセンターに紹介となるのだろう。年齢を考慮すると一度は高次医療機関に紹介しなければならない。当院には緩和ケアとなったところで紹介されてくるかもしれない。

 

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