なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

胸痛・背部痛を訴えない大動脈解離

2014年10月14日 | Weblog

 81歳男性が午後に内科外来を受診した。3時間パチンコをしていて、気が遠くなって冷や汗をかいて、そのままうずくまるように倒れたという。すぐに気がついたらしい。救急車で来てほしいところだが(救急要請を本人がいやがったらしい)、パチンコ店の従業員に連れてきてもらったという。受診時の血圧は70台だった。

 この患者さんは心臓ペースメーカー植え込み術後で、循環器科に外来に通院していた。高血圧症で普段の血圧は150/80mmHgだった。普通に会話はできて、頭痛も胸痛も(背部痛も)ないという。心電図では心室性期外収縮が少しあったが、ペースメーカー調律で、波形は前回の心電図と同じだった。急性心筋梗塞の発症はないとは言えないが、判断しがたい。血液検査では異常がないだろうと思って提出したが、白血球数16000、CRPが9と上昇していた。呼吸器症状はなく、胸部単純X線で肺炎像はない。ただ、酸素飽和度が89~90%と低下している。以前に肺梗塞が疑われて造影胸腹部CTを受けた既往がある。

 点滴(ソルラクト)をして血圧を測定していが、90mmHgくらいにしか上がらない。心血管性失神かということで、胸腹部造影CTを撮影すると、大動脈弓から下行大動脈にかかる部位からの解離だった。右腸骨動脈まで解離は及んでいた。肺塞栓はなかった。循環器科医に連絡して、心臓センターのある専門病院へ転送となった。胸痛はあるか、背部痛はあるかと何度聞いても、痛くないと答えていた。

 パチンコ店の従業員さんは、病院に連れてきてくれただけではなくて、後から患者さんが出したパチンコ玉の分を換金してもって来てくれたそうだ。

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