なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

病院総合診療学会

2016年09月18日 | Weblog

 9月16日・17日は日本病院総合診療学会に初めて参加した。東京品川での開催で参加しやすかった。品川プリンスホテルのNタワーに宿泊した(いつの間にかできていたビジネスホテル)。時間がなくて利用できなかったが、17階に自由に使える仕事用のスペースがある(今回は朝食サービスだけ利用)。ここも東京に宿泊する時の候補になる。次世代リレー教育講演を中心に聴いていた。

 「+αのスキル」 リーダーシップには、上位下達型双方向型奉仕型(サーバントリーダーシップ)の3タイプがあって、状況に応じて使い分ける。上位下達型は、初期研修医の指導や外科系での指導で行われる。奉仕型は、それぞれすでに独立した人たちに対するもので、自由にやってもらって何か問題がある時だけ相談に乗ってアドバイスをする。リーダーシップは後天的に獲得できるものだという。

「AIDS」 HIV感染と判明したら、CD4値に関係なく全例ART(Anti-Retroviral Therapy)を即時開始する(一生涯治療継続)。日本での新規発症はHIVが1000人、AIDSが400人。問題点は、AISDが進行して診断される例、HIV感染者の高齢化、HANDS(HIV-associated neurocoginitive dysfunctionHIV関連神経認知障害)、ARTの長期継続による副作用。HIV感染者の死亡原因は、AIDS・肝疾患・心血管疾患・非AIDS悪性腫瘍。 HIV感染では10%でHBV感染併発。genotype Aの欧米型が多く、慢性化しやすい。核酸アナログで治療。ART導入後にHBVの免疫再構築症候群に注意。HCV感染併発ではDAA(direct acting antiviral)で治療(非HIVと同じ効果)。 

「パーキンソン病」 パーキンソン病は50際以降に発症し、70歳で100人に1人、75歳で100人に3人発症。日本の患者数は20万人。黒質ドパミン神経細胞の変性脱落で起き、発症時は30%に減少している。細胞内にレビー小体が形成され、αシヌクレインを含む。症状は運動症状と非運動障害。運動症状の動作緩慢が含んで筋強剛・静止時振戦姿勢保持不安定のうち3つ以上あれは診断される。特徴は片側から発症すること。

 診察では、症状を取りにいく必要がある。静止時振戦は、1)リラックスさせる、次に2)精神的に負荷をかける(100-7を言わせるか、野菜の名前を10上げてもらう)と輸発される。筋強剛は、対側の手でグーパーをさせて誘発する。姿勢反射障害は、患者さの後ろに立って、後ろに引くことを伝えてから強く引く(正常は2歩で止まる)。公費負担の目安になるので強く引いて陽性を引き出す?(オフレコ)。検査はMIBG心筋シンチグラフィー(交感神経心臓枝の障害)とDaTSCAN(ドーパミントランスポーター)。

 治療は、L-ドーパ(レボドパ)で予後10年以下から20年以上になった。年齢が70歳以上あるいは生活に障害があれば、L-ドーパで治療を開始70歳未満あるいは軽症では、ドパミンアゴニストで開始。(抗パーキンソン病薬はすべて対症療法薬で、疾患の進行を抑える作用はない) L-ドーパでwearing-off(効かない)、dyskinesia(効きすぎ)が起きるが、経過とともに治療域が狭くなることで起きやすくなる。外科治療で深部刺激療法がある。

 5年は薬が効きやすい時期(ハネムーン期)があるが、効果が減弱して不随意運動が目立つようになる。非運動症状(嗅覚低下、レム睡眠行動障害・便秘など)は運動症状が出現する前から現れる。意外な症状としては鼻漏は健常者の3倍ある。鑑別としての脳血管性オパーキンソニゾムは症状が下肢を強く出ること、左右差がないことが違う。「パーキンソン病の診かた、治療の進め方」水野美邦著を読んでみよう。

「つかえ感」 機能性ディスペプシアは、内視鏡検査で明らかな器質的異常がないにも関わらず、上腹部症状をきたす。症状は食後愁訴症候群(食後後の胃もたれ感・早期膨満感)と心窩部痛症候群(心窩部痛・心窩部灼熱感)。胃食道逆流症GERDは、びらん性GERDが4割、非びらん性GERD(NERD)が6割。PPI常用量8週間投与で9割は改善するが、1割は改善しない(PPI抵抗性GERD)。薬剤調整(漢方薬、消化管運動改善薬を追加)やPPIの変更(倍量投与)を行う。食道運動障害のうち、食道アカラシアは下部食道括約筋(LES)の弛緩不全と食道蠕動波の消失を認める(3型に分類され、造影でわかりにくい型も)。治療は薬物治療(硝酸薬など)・食道バルーン拡張術・手術(経口内視鏡的筋層切開術POEM・腹腔鏡)。

 特別講演で、獨協医科大学の総合診療科を立ち上げた、志水太郎先生の講演があった。大学病院などの大病院での総合診療は、主に診断医学diagnostic medicineということだ。診断力をつけるにはという質問に、自分で診た患者さんのその後の経過を確認すること、と答えていた(一応全例ではないが、している)。地方の中規模病院では遥かに低いレベルになるが、少しずつ診断力をつけるのが楽しみで診療している。あと、できる先生の著書を買って、サインしてもらうのが趣味?。

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