なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

「止まらない”せき”の診かた」

2016年09月24日 | Weblog

 病院綜合診療学会の間に「止まらないせきの診かた」田中裕士・著(南江堂)を読んだ。内科外来ですぐに使える知識が満載で役に立つ。咳で受診した患者さんに対する問診を今までより詳しくとれそうだ。これまで長引く咳は、上気道感染後の咳以外は、胸部X線・CTの画像で異常を認める疾患を除外すると、咳喘息・副鼻腔気管支症候群、胃食道逆流症を鑑別するという単純なものだった。

 咳嗽の分類は、1)急性咳嗽(3週間以内)、2)遷延性咳嗽(3~8週間)、3)慢性咳嗽(8週間以上)。急性咳嗽は主に感染症による咳嗽で、慢性咳嗽は主に感染症以外の(アレルギー性)咳嗽。咳嗽の原因は、原因疾患が2つ以上重複していることが多い。

 好発時間 

 1)喘息・咳喘息  夜間から早朝にかけて(3時~6時)の眠れないほどの咳嗽(心不全がなければ)。ICS、ICS/LABAで咳嗽は著明に減少する。少なくとも1週間の治療で咳嗽の強さが半分以下にならなければ、アレルギー性鼻炎・副鼻腔炎・咽喉頭炎を合併している。

 2)アレルギー性鼻炎・副鼻腔炎・咽喉頭炎  咳嗽は19時から徐々に増加して就寝時から朝3時までに1つのピークがあり、朝起床6時から9時までにもう1つのピークがある。機関銃のような激しい咳嗽が強く出たかと思えば、その後一定時間は全く出ないという発作的な咳嗽が1日何回か繰り返す。

 3)逆流性食道炎  咳嗽は夜間よりは昼間に多い。食後の満腹時にゲップといっしょに乾性咳嗽が出やすい。食後3時間以内に就寝すると就寝後に咳嗽が出る。

 4)心因性咳嗽  人から注目されたい昼間に多く咳嗽が出現し、夜間睡眠中は全くでない。

 この好発時間に注目するだけでも問診に役立つ。症状が改善しない時は、複数の疾患の併発を考えるというのも、目から鱗。確かに、咳喘息が改善しない患者さんを呼吸器科に紹介したら、逆流性食道炎の治療を追加されて軽快した。感染症としては、マイコプラズマや百日咳なども詳細に記載されている。吸入ステロイドの粒子径については、粒子径によって効果が異なるという立場で、「成人吸入薬のすべて」は大差ないという立場で、この点では意見が違う。この本は「買い」だ。

 

コメント
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