水曜日に84歳男性が食事を飲み込めなくなったと、耳鼻咽喉科の外来を受診した。耳鼻咽喉科的には咽喉頭に問題がなく、内科外来に回された。
この患者さんは、8月に右後頭葉の脳梗塞で地域の基幹病院の脳神経内科に入院した。認知症による不穏で、急性期のうちから当院に転院依頼が来て、精神科医の処方した大量の抗精神病薬をもって転院してきた。
転院後も夜間不穏で、ナースステーションの脇にベットを持ってきて診ていた。抗精神病薬を調整(追加・減量)して、転院後よりは診やすくなった。
両側の後頭葉の脳梗塞を来しているので、視力低下が著しい。また認知症の程度もひどいので、奥さんの在宅介護は大変だと思われた。精神科病院への転院を勧めたが、経済的な理由があって、自宅退院になった。
脳梗塞再発が疑われた。内科に回ってくると、のどが渇いたと言って両手でペットボトルを持って飲んでいた。問診が成り立たないので、すぐに画像検査をすることにした。頭部MRIで、右中大脳動脈(MCA)領域に新規の脳梗塞を認めた。MRAで右MCAの描出されない。左MCAも狭窄して心もとない。
もともとの慢性腎不全が脱水症で悪化している。入院治療を勧めたが、妻は経済的な理由で入院できないという。妻は認知症ではないが、思う込みが強く話が通じないところがある(お金の問題も大きいのは確か)。ここまま帰ると亡くなる可能性もある、と伝えたが、もう年だし、それでもいいという。
前回入院時に来ていた隣県の娘さんに連絡して、入院について相談するように勧めた。看護師さんから連絡がきて、娘さんの許可がとれたので、入院でお願いしますという。
数日抗精神病薬は内服していないが、もそもそと身体を動かすが、内服なしで経過をみれそうだった。慢性腎不全なので使用できる薬も相当に限定されるが、1週間点滴治療で経過をいることにした。経過をみるうちに左中大脳動脈領域にも脳梗塞が起きるかもしれない。
当院向きの患者さんではある。