金曜日の午前中は救急当番だった。隣町の救急隊から66歳男性の搬入依頼があった。
前日の夕食後から腹痛が出現して、数回嘔吐している(食物と胃液)。腹痛後から排便がなかった。35歳ごろに虫垂切除術を受けた既往があった。
腹痛は持続していて、時々強くなるらしい。症状からは癒着性腸閉塞が疑われた。当院は外科常勤医は不在で手術はできない。地域の基幹病院に直接依頼した方がいいと思うので、連絡してみて下さいと返答した。
また救急隊から連絡が来て、受け入れは難しいようですという。一人暮らしで家族がいないので受け入れられない?、と言われましたという。まず当院に来てもらってから、搬送依頼をすることにした。
腹部が膨満して、腹部全体に圧痛がある。腹膜刺激症状はないと判断していいようだが、膨満していてよくわからない。
ちょうどその時に、COVID-19患者の外来アセスメントが2例来ていて、CT室に行くところは扉を閉めて封鎖されていた。単純X線は撮影できるので、まず胸部X線・腹部X線をみることにした。
腹部臥位X線では腸管が拡張して、浮いているように見える。左下デクビタスでもいいかと思ったが、頑張って立位になれますかと訊くと、できるという。放射線技師さんが防具をつけて付き添ってくれた。何とか腹部立位X線がとれて、ニボーが見える。
その後ちょっとふらっとして、すぐに臥位になってもらった。搬送依頼の時に「ニボーがあって」と先方に伝えるために無理をさせてしまった。
CT室はすぐに空かないようなので(CT室でバイタルチェックと採血もする)、その時点で基幹病院外科に連絡を入れた。外科医師が出て、受けてくれた。すぐに診療情報提供書を準備して、ありがたく搬送した。
コロナの迅速検査は陰性で、また県庁所在地から従兄弟が来てくれていて(救急車を呼ぶ前から連絡していたらしい)、家族がいないという条件?もクリアした。採血結果は血算と血液ガスしか出ていないので、生化学検査などは後でFAXした。
CTを見ないと、癒着性腸閉塞とは決められない。Free airはなかったので、消化管穿孔ではなさそうだ。次第に便秘気味になっていたという病歴ではないが、大腸癌による閉塞だったりすることもある。