透析で通院している60歳代後半の男性にタール便があり、腎臓内科の若い先生が地域の基幹病院消化器内科に紹介した。血圧が94/54と低下して、Hb4.8g/dlになっていた。
緊急内視鏡検査が行われて、胃前庭部に腫瘤があり、中心部に潰瘍形成していた。内視鏡的処置は要さない状態だったので、生検のみ行っていた。
腹部CT(単純)で確認すると、膵体部癌があり、多発性肝転移を認めた。腹水もあり、癌性腹膜炎になっている。胃の腫瘍も転移性と判断されていた。(肝左葉に転移があり、そこから連続性に胃に伸展していったようにも見える)
内視鏡所見をみると胃前庭部に腫瘍は粘膜下腫瘍様で中心部に陥凹形成しているという形態だった(原発胃癌の形ではない)。濃厚赤血球6単位が輸血された。
腫瘍内科と相談したが、抗癌剤治療の適応はないと判断された。家族に病状説明されて、緩和ケアの方針となった。紹介したのが、9月6日で9月8日には当院に転院となった。(先方は維持透析はしていない病院)
月曜に腎臓内科の先生から、こんな症例がという話があり、輸血をどこまでするかと相談された。正解がないことですが、と言っていて、他の人にも話してみたかったということらしい。
断続的に輸血をしていって、病状が悪化した段階であきらめることになるのだろう。
透析患者さんは年に1回胸腹部CT(単純)で癌検索をすることになっている。今年の5月にCTが行われていて、放射線科の読影レポート(大学病院の遠隔診断)は「以前と変化なし」だった。
今回のCTと比べて見ると、ここがそうかもと思われないこともないが、腫瘍を指摘するのは無理だった。進行が早い癌なのだろう。