7月27日の衆議院厚生労働委員会に参考人として呼ばれた東大アイソトープ総合センター長の児玉龍彦教授(58)は、居並ぶ国会議員に向かって。絶叫”した。この映像が動画投稿サイト 「YouTube」にアップされると、再生回数は数日で20万を突破した。
〈感動した。東大にもこんな先生がいるんだ〉〈恐ろしい事実がわかります。国の無策がわかります〉といった激賞が書き込まれている。
内科医でもある児玉教授は、内部被曝研究の第一人者だ。それだけに、その言葉は衝撃的だった。
〈(3月21日に)枝野(幸男)官房長官が「差し当たり健康にあまり問題がない」とおっしゃいましたが、私はこの時に大変なことになると思いました。
われわれが放射線障害をみる時は総量をみます。東京電力と政府は今回の福島原発事故の総量がどれぐらいか、はっきりした報告はまったくされておりません〉
同センターは、今回の原発事故による汚染の度合いを独自に試算した。児玉教授は委員会でそのすさまじさを説明した。
〈今回、広島原爆の29・6個分、ウラン換算では20個分か漏出しました。原爆による放射線の残存量が1年で千分の1程度に低下するのに対し、原発の放射性汚染物は10分の1程度にしかならないのです〉
児玉教授は震災後、福島県南相馬市での除染作業を7回行ったというが……。
〈私か現在やっているのはすべて法律違反です。現在の(放射線)障害防止法では各施設で扱える放射線量、核種等は決められています。南相馬の支援を行っていますが、多くの施設はセシウムの使用権限なんか得ておりません。
車で運搬するのも違反です。しかし、お母さんらに高線量のものを渡してくるわけにはいきません。除染では、すべてのものをドラム缶に詰めて、東京へ持ち帰っております〉
そして、一刻も早く子供の被曝を減らすため新法を制定すべきだ、と髪を振り乱して力説した。最優先課題として、汚染地域での徹底的な測定を求めている。
〈なぜ政府は全面的にお金を使わないのか。私は満身の怒りを表明します〉ネット上での大反響を受け、児玉教授の息子はツイッターでこう書き込んだ。
〈父は影響力のある科学者ですが、同時に病気の妻を抱えた58歳のただの男です。一人ですべてを解決できるわけではありません。本当に状況が良くなるために、一人一人ができることがあると思います〉
8月6日、南相馬市長と一緒に会見し、緊急除染の必要性を訴えた児玉教授は、穏やかな口調の紳士だった。
息子の書き込みを見せると、「書いちゃったようで……」と照れくさそうに笑い、改めてこう訴えた。
「どこの党が議員立法などで迅速に動くのか、国民は注視すべきです」重い言葉である。