以下は前章の続きである。
どの国のどの指導者に会っても、安倍晋三首相は必ず、北朝鮮の国家犯罪である拉致について語ってきた。
日本から遠いアフリカ諸国歴訪でも同様だ。
全ての国の指導者に、問題解決への協力を要請し、北朝鮮に対する道義的制裁の網を国際社会で築き上げた。
だからこそ、4月の米フロリダ州における日米首脳会談でトランプ氏は次のように語ったのだ。
「拉致問題解決がシンゾーにとって最重要課題だから、私にとっても大事なのだ」
南北会談、中朝会談、来朝会談などが続く中で、「安倍政権は蚊帳の外」「拉致問題を抱える日本への(米国の)配慮は皆無に近い」などという批判があるが、無責任というものであろう。
事実に反する政権批判は、政権の足元を危うくし、結局北朝鮮やその背後の中国などを利する。
いまは、日本人は力を集結して国難に当たるときだ。
トランプ政権内に拉致問題への理解と同情があるとしても、情勢は甘くなく、6月の米朝会談は日本の岐路となる。
中国が北朝鮮の後見国となり、米国人人質を解放し、南北融和ムードが演出される中で、米国がリビア方式か、軍事オプションかと迫るのは、より困難だ。
北朝鮮の非核化が実現したとしても、その後の朝鮮半島に米国が関与し続ける保証はあるのか。
韓国の文在寅大統領の社会主義革命路線を見れば、韓国が北朝鮮に歩み寄って、朝鮮半島から自由や民主主義が失われていく可能性も高い。
38度線が対馬に南下するとき、旧本は対処できるのか。
中国の勢力拡大はこの間も着々と進んでいる。
今年3月の憲法改正によって習近平氏は終身、国家主席の地位を得た。
立法府、行政府、司法、軍、さらにメディアも人々の生活も宗教も中国共産党の直接支配を受ける。
習氏は共産党のイデオロギーを国内のみならず、一帯一路を手始めにアジア、アフリカ、欧州にも浸透させるつもりだ。
すでに台湾、南シナ海で米中対立が顕著になりつつあるように、米国はそのような中国の世界支配を受け入れはしないだろう。
米中の緊張が高まるとして日本には米国との協調しかない。
認識すべきことは、米国の協力なしには日本国民を救出する力さえ、いまの日本にはないことだ。
「蚊帳の外だ」と政権批判する前に、日本国として拉致問題を解決するには、どうすべきか、国民を守れる国になるにはどうすべきかに全政党、全政治家が知恵を絞るべきだろう。
にもかかわらず、18連休して、ようやく始まった国会審議ではまたもや加計学園問題だ。
5月10日、元首相秘書官の柳瀬唯夫氏の参考人招致を受けて、立憲民主党の逢坂誠二氏はさらなる徹底調査が必要という観点から愛媛県知事の中村時広氏らを国会に呼ぶ可能性に言及した。
彼らの視野に国際情勢や拉致被害者奪還という課題はあるのだろうか。