チョイ前の、海難事故の話題 ──。自航式昇降台船(SEP船)っていやあ、脚(あし)となる鉄骨の"掛け梯子"を4本(軽量船なら3本)内装し、そいつを海底に降ろして船体を海面から持ち上げ、海中や海上の建築土木工事を支援する重建機船だ。
その一隻が先般、中国は深圳の沖合(つまり南シナ海)で横転、沈没した。乗員(船員でなく作業員?)4名が行方不明だと言う。海底に「脚を立ててない」状況下で傾いたらしく、鉄骨の塔の重心が洋上にあったのだから、船底に浸水したらひとたまりもない。(最期は)いっきに❕ ひっくり返ったろうと思われる。まさに「轟沈」だ。
関連の写真で、経緯や背景を留めておこう。
沈没した『Sheng Ping 001』は元々、在シンガポールの海洋コングロマリット『Ezionホールディングス』がベトナムで建造・所有してた船だ。2015年竣工だから、船齢はまだ若い。シンガポール船籍時代は『TERAS FORTRESS 2』と名乗ってた。Ezionは、昨20年暮れに早々と新造船を売却。転売を経て、現在は『升平001※』と命名され中国船籍のSEP船となったのである。
※船名の「升平(昇平)」は、中国では「太平」の類義語。
↓ 前身時代の同船。見たところ「多用途向け」の3本脚な外観だ。
↓ 前身時代の航行の様子。強風や潮流軽減のため脚柱は中ヌキ鉄骨。
…で。
この『升平(シェンピン)001』、事故の起きた7月25日は深圳市の南方、恵州海域の洋上風力発電設備群(いわゆる洋上ウィンドウファーム)の建造に携わっていた。施工主は中國原電(CGN)、請け負ってたのは明阳智能(ミンチャン・スマートエナジー)グループである。
船体が浸水を免れてるうちは傾斜15度で(転倒を浮力により)持ちこたえてたが、船底に水が満ち始めるとあっちゅーまに転覆。
報道画像↓ を見ると、備え付けの救命艇 5隻は全艇、キレイに使い切られてる……が作業員を合わせた乗組員は67名も!?いたそうで、さすがにこれっぽちの救命ボートじゃ定員数が足りてない。相変わらずの「人命軽視なザル労務管理で突貫工事する💧お国柄」が透けて見える。この事故では周辺の漁船なども救助に駆け付けたが、それでも4名の船員が行方不明となった。
本件は、被災船が海底表面まで脚柱を降ろし切ってない状態で発生した。
となると、直接の原因は「強風に煽られた」ことが考えられる。そもそも「海風のメッカ」でもない限り、洋上ファーム建設地なんぞにゃ選ばれない。
だから風力発電塔を設営するSEP船って言や、まっ先に「専用のSEP船=WTIV」が供されるのがフツーなのだ。WTIVは大型、特に船底面積が広く、船のヨコ揺れ圧力に海面張力が張り合える構造になっている。『升平001』みたく、マルチタスク用途なSEP船に出番が回ることは少ない。
そんな船まで「危険な海域」に大勢の要員と共に送り出すなんて、さすがに建造プランにも問題があったろう❔ っつ話。コトによったら、納期を急がせたい余り❔ 甲板上に鋼材とかを過積載してた疑いさえ持たれる。過積載船が傾くと車載フェリーの転覆みたく、荷崩れによる重心逸脱が避けられない。
つい そんな勘繰りを巡らしてしまうのは、現代中國企業間の過当競争💣という実情がある。前出の明阳智能↓ は風力発電機の開発製造から洋上ファーム設計施工など、風力発電分野をトータルに支援する総合メーカー。
ところが、この「総合風力メーカー」が大手だけで4社も存在する💧のが、今のクレイジー好況国 中國なのだ。
「総合家電」にせよ「総合自動車」にせよ、世界常識的に言うと「総合メーカーは各分野、せいぜい1国に1社か2社」あれば十分なポテンシャル。ところが経済伸長が異常に跳ね上がった急成長国でだけ、その「総合メーカー」が何社も過剰に乱立してしまう。かつての日本の「電機」「家電オーディオ」「自動車」など、その"異常増殖パンデミック"の最たるモノだ。
その狂乱が今、お隣中國の日常経済と取って代わり、バブル崩壊の「静かに忍ばせた」足音で世界を戦々恐々と💧させている。IT化促進の一方で重厚長大産業界の熾烈なパイの奪い合い、度を越した大規模土建工事の発注乱発。哀れ『升平001』は転覆すべくして転覆したのだろう、と思えてならない。
=了=
The Sheng Ping 001 jack-up vessel tilted on 25th July while working at China General Nuclear Power Corporatnoion’s (GCN) wind farm off Huizhou, with four reported missing.
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