おっちーの鉛筆カミカミ

演劇モノづくり大好きおっちーのブログです
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ONE EYES(7)

2009年03月19日 23時37分58秒 | 小説『ONE EYES』

第2章 傘もささずに(3)



「友達」
 と男が言った。
 ハア!?
 慎平は心の中で全力の突っ込みを入れていた。
 誰が誰の友達なんだ!?
「あぁそうなんだぁ」
 みどりが納得したような返事をしている。
「そう」
 ああ!馬鹿らしい!こんな奴に付き合ってられるか!
 慎平は頭の中で渦巻いている疑問、わだかまり、全てを無視してこの場から消えようと思った。
「ねえねえ、あなたお名前は?」
 なんか質問されたなあ!俺に答える義務はあるのか!?
 慎平が言葉に詰まっていると、
「……うーん……そうだ、せっかくだし教室見学されてったらいかがですか?」
 なんだ、この女もこのチラシが貼ってある絵画教室の関係者なのか。
 まあこの男との話し聞いてたから分かってたんだけどな。
「教室目の前ですよ。そこ、そこ」
 みどりという女は塀の向こうに立つアパートの2階の方をしきりに指さす。
「あー、イヤ、遠慮しときます」
 慎平はようやくこの場を去る間が出来たと感じた。
 2人から何歩か遠ざかる事ができた。
 肩の荷が下りた感じだ。
 ふう。
 このまま。このまま。
 しかし。
「別に教室に入学するんじゃないですよ、当たり前ですけど。授業を見学しませんかって」
 みどりは意外と粘り強かった。
 慎平の向かう方に立ちはだかる。
「タダですよ、タダ。いろんな話が聞けるし、あなたも絵を描くんだったら、そうだ道具も揃ってるしいっちょ描いてみたらどうですか?」
 慎平はみどりの真意が読めない。
 なんで初対面の俺をこんなに引き止めるんだ?
 ……
 ははあん。
 慎平はみどりの顔をまじまじと見詰めた。
 長い睫毛。奥二重で、笑うと三日月みたいに細くなる目。その目蓋の隙間から覗く、光を放つ茶色い瞳。通った鼻筋に丸い小鼻。優しげにカーブを描く眉。愛らしいけど、少し色っぽさをも感じさせる口元。雨に濡れて、湿っているボブカットの髪。
 ちょっといいかもしんない。
 みどりちゃんって可愛いかも。
 これが慎平の病気である。
 自分に少しでも気があると思ったら、その女性のいいところだけしか見なくなって、勝手に好きになってしまう。
 もっとも、そんな恋心にはいつもゴールなどないのであるが。
「どうしよっかなあ」
 慎平は、それまでの意志を180度方向転換した。
「いいじゃんいいじゃん、来なよー」
 みどりもそれを感じ取って、追い討ちを掛ける。
 将と呼ばれた男はその様子を傍観しているようだ。
 将はいい流れになってきたとほくそ笑んでいる一方で、慎平とみどりの様子に一種の苛立ちの感情が湧き出るのを抑えられないでいた。