第4章 え?親友ってヤツ。(1)
市川修は、アパートの軒先に居た。
結局今日も来てしまったのだ。それは毎日。休む事なく。
修が腕時計を見ると、もう5時半だった。『授業』はとっくに始まっているだろう。
アパートの屋根と、隣の建物の隙間から、空を見上げた。
雨はもう止んでいる。
でも空は、まだ固い雲に、覆われていた。
そろそろ梅雨も明ける時期だよな。
修は乾き始めた階段のステップの1つ1つを踏みしめ、アパートの2階に上がった。
目的のドアの前に立ち、脇にある傘立てに、乾きかけた自分の傘を差し込む。
あれ?今日はいやに本数が多いな。たくさん人が来てるのか。
そして、ピコタン絵画教室の扉を開けた。
「こんにちはー。遅れてごめんなさーい」
「はーい!」
奥から、明るい女性の声が返ってきた。
この声の主はもちろん……
奥の部屋から、20歳くらいの女性がパタパタと足音を立ててやってくる。
修は玄関の中に入って靴を脱ぎ、置いてあるスリッパに履き替える。
玄関の隣は、すぐ台所になっている。あまり掃除は行き届いていないようだ。
流しとコンロ。
ここで愛奈さんが料理の腕を振るってくれることもあった。
いつも通り、脱いだ靴はいちおう揃えておく。
あれ? ひーふーみー……6つ靴が並んでいる。いつもより1人多い。
やっぱり誰かお客さんが来ているのだろうか。
修はちらりとみどりちゃんの方を見た。
「将さんのお知り合いが来てるの」
「へえ、どんな人?」
「いい人よ。会ってみれば分かるわ」
へえ……
修は、そのお客に対して興味が出てきた。
奥の部屋に続く短い廊下を進み、リビング――そこが教室になっている――に入る。
部屋の中にはいつものメンバーだ。
先生、みどりちゃん、将さん、皆神さん。……もう1人の愛奈さんは、隣の部屋――アトリエ――だろう。
そしてもう1人、
「あれっ?」
修は思わず声を上げていた。