第4章 え?親友ってヤツ。(3)
その部屋にいた、ピコタン絵画教室の最年長者・皆神が口を挟んだ。
「お2人はお知り合いなんですか?」
修が答える。
「……ええ、中学高校の同級生なんです」
「そうなんだ? すごい偶然だね」
みどりが改めて驚きを表す。
「そうなんよ!」
慎平が軽くおちゃらけながら答える。
同じ部屋に居る、将は黙っていた。
そして、修と慎平の2人は、部屋にいる間中、常に痛い視線を感じていた。
「じゃ。……先生、ありがとうございました。失礼します」
修と慎平は、アトリエ、兼倉庫として使われている、隣の部屋に移る。
修は襖を開けて、部屋に入った。
そこには愛奈――先生の奥さん――がいる。
慎平が続いて入ってきて、修は襖を閉める。
「聞こえたよー。親友ってやつ?」
愛奈が、根っからの明るい笑顔で、2人の顔を交互に見ながら訊ねてくる。
「違いますよ」「そんなんじゃないっすよ」
2人は同時に答えた。
「何言ってるかわからない」
愛奈は、わははと笑いながら言った。
「まあ、腐れ縁ですね」
修が改めて、2人を代表して答えた。
「腐れ縁、ね……あたしにもそんな友達何人かいたけど、結婚してから……もう随分連絡とってないなあ」
愛奈の視線が宙に浮いた。
「そうなんですか」
修が相槌をついた。
「あんたたち見てたら、会いたくなっちゃったよ、その子達に」
その言葉を、慎平は珍しく黙って聞いていた。
「ここでゆっくり話しなさい。私はちょっと、買い物があるから」
「えっ愛奈さん、お気遣いなく」
修は慌てたが、
「違うの、本当に今足りないものがあるの!」
慎平は黙っている。
「じゃ、行ってくる」
「行ってらっしゃい……」
修と慎平は、愛奈を見送った。
襖が閉まる。
部屋には修と慎平だけが残された。
修の中には、慎平とあんまりの偶然で再会した驚きと、ちょっとの喜びが改めて脈打っていた。
「まだ同人誌書いてるん?」
慎平が修に訊いた。