祖母の声もともにたたんで秋扇 桂信子
一読では解しがたい
二読して誰もがうなずくことになる
年老いた祖母の話し相手にやさしくなっていたのだが
とりとめのない話はいつまでも終わらない
少しの後ろめたさを感じながらも
その時間をたたむ
声も扇とともに畳んだという信子がよく分る
(小林たけし)
【秋扇】 あきおうぎ(・・アフギ)
◇「扇置く」 ◇「忘れ扇」 ◇「秋扇」(しゅうせん) ◇「名残の扇」 ◇「捨扇」(すておうぎ) ◇「秋団扇」(あきうちわ) ◇「団扇置く」 ◇「捨団扇」(すてうちわ)
秋になって顧みられなくなった扇。また、残暑の候なお用いている扇。夏の名残を惜しむ心が湧く。夏の外出時に持ち歩いた扇が使われないままバッグの底にあることもいう。同じく「秋団扇」は秋になっても用いるうち団扇。または、しまわずに置いてある団扇のこと。
例句 作者
ひっそりと忘れ扇の物語 手塚逸山
ひらきたる秋の扇の花鳥かな 後藤夜半
オペラ座の序曲始まる秋扇 赤尾恵以
世は不況わたしは不興秋扇 中嶋秀子
乘り換へて女かしまし秋扇 松村筐花
捨扇三島由紀夫は死んだはず 小野裕三
秋扇や寂しき顔の賢夫人 高浜虚子
ひっそりと忘れ扇の物語 手塚逸山
ひらきたる秋の扇の花鳥かな 後藤夜半
オペラ座の序曲始まる秋扇 赤尾恵以
世は不況わたしは不興秋扇 中嶋秀子
乘り換へて女かしまし秋扇 松村筐花
捨扇三島由紀夫は死んだはず 小野裕三
秋扇や寂しき顔の賢夫人 高浜虚子