竹とんぼ

家族のエールに励まされて投句や句会での結果に一喜一憂
自得の100句が生涯目標です

板張りの歌声喫茶二つ星  たけし

2020-08-14 | 入選句



板張りの歌声喫茶二つ星  たけし



2020.08.14 朝日新聞 栃木俳壇 石倉夏生先生の選をいただきました

投句は7月20日のもので季節感は現在とは異なるものです



毎日のビデオ句会でメンバーが出す席題のものです

お題は「歌」でした

即吟を求められての苦し紛れのものでした



高校生の頃、学生服の詰襟を隠して通った

横浜伊勢佐木町にあった歌声喫茶「ともしび」

小さな歌集を何冊も集めていました

エアコンもないあの時代

店の床は板張りだったことを妙に思い出します

私の青春でした



店がクローズするともう深夜、

七夕の夜もありました

行く道のままに高きに登りけり 富安風生

2020-08-11 | 今日の季語


行く道のままに高きに登りけり 富安風生

季語の本意とは離れているが
実景ととるも良し心象ともとれる一句だ
道は志す道ととればその意味は深い
気づいてみれば己の立ち位置は思いのほか高い
驚きと同時に達成感も感じている作者が浮かぶ
(小林たけし)

【高きに登る】 たかきにのぼる
◇「登高」(とうこう)
重陽に茱萸(ぐみ)を詰めた赤い袋を下げて高い所に登り、菊酒を飲むと齢が延びるという中国の古い言い伝えがあり、これを「登高」という。現在では近くの山、丘陵にハイキングに行くことも表す。

例句 作者

登高の人影動く豊後富士 髙松勝々子
登高やみんな似てくる素老人 安西篤
登高や小石は崖を転げおち 大野朱香
一足の石の高きに登りけり 高浜虚子
登高のこころの鐘をつきにけり 鈴木五鈴
けふの日の高きに登り虚子思ふ 山口青邨
登高の二年二組にまた会へり 羽根嘉津
わが町の見ゆる高きに登りけり 塚月凡太
地酒醒め高きに登る女たち 赤尾兜子
亡びたる城の高きに登りけり 有馬朗人




一日は一生であり酔芙蓉 大野黎子

2020-08-10 | 今日の季語


一日は一生であり酔芙蓉 大野黎子

一日は一生でもあり
の措辞は作句のTPOで多様に鑑賞されそうだ
詠み手読み手の感傷も影響される
取り合わせの季語「酔芙蓉」にドラマのプロロ^グを感じる
(小林たけし)

【芙蓉】 ふよう
◇「白芙蓉」 ◇「紅芙蓉」 ◇「花芙蓉」 ◇「酔芙蓉」(すいふよう)
アオイ科の落葉低木。初秋のころ、淡紅色で五弁の艶麗な花を開き、一日でしぼむ。野生のものもあるが、通常は栽培されている。

例句 作者

この刻はまだ酔へませぬ花芙蓉 片野祥
マドンナのそこはかと老ゆ花芙蓉 赤木悦子

一日を悔いなく生きて紅芙蓉 大谷房代
六日九日すぎて芙蓉に立ち止る 平井寛志
呪ふ人は好きな人なり紅芙蓉 長谷川かな女
この刻はまだ酔へませぬ花芙蓉 片野祥
マドンナのそこはかと老ゆ花芙蓉 赤木悦子
一日は一生であり酔芙蓉 大野黎子
一日を悔いなく生きて紅芙蓉 大谷房代
六日九日すぎて芙蓉に立ち止る 平井寛志
呪ふ人は好きな人なり紅芙蓉 長谷川かな女
素顔にて男は足らふ酔芙蓉 田中水桜
朝まだき嘶き芙蓉咲きにけり 菅原鬨也
底紅や黙つてあがる母の家 千葉皓史
白芙蓉傷あとは身に深くあり 乾鉄片子
ゆめにみし灯とのおとろへ芙蓉咲く 久保田万太郎

水音をふろしきに入れ長崎忌 河西志帆

2020-08-09 | 今日の季語


水音をふろしきに入れ長崎忌 河西志帆

被爆者の喉の渇きを癒すすべはないのだが
水の音を耳にするとその思いが蘇る
ふろしきに入れようのない水の音だが
作者の心中を思場その不合理こそが悲しみなのだと
納得する
(小林たけし)


【原爆忌】 げんばくき
◇「原爆記念日」 ◇「広島忌」 ◇「長崎忌」
昭和20年8月6日に広島、9日長崎に原子爆弾が落とされた日。30万人の命が失われた未曾有の惨事を二度と繰り返すまいという祈りを込めて、この日広島と長崎では犠牲者への追悼の式典が行われる。「広島忌」「長崎忌」

例句 作者

雀来て原爆の日の水たまり 山本雅子
ごくごくと白湯飲む朝や原爆忌 美谷島寸未子
拭いてすぐ曇る眼鏡や原爆忌 伊藤仙女
竹とんぼ遠くへ飛んで広島忌 北村菜々子
原爆忌ぬかづきてみな無帽なる 宮下翠舟
鎮魂の火の穂短かし広島忌 藤井艸眉子
ひろしま忌一基の墓を母校とす 赤松蕙子
原爆忌の睡り誘ふ夜風欲し 楠本憲吉
十一時二分わたしの祷り長崎忌 山崎芳子



上書きの上に上書き八月来 たけし

2020-08-07 | 入選句



上書きの上に上書き八月来 たけし



朝日新聞 栃木俳壇 石倉夏生先生の選をいただきました

八月は6日9日15日とあの二度の原爆投下

そして終戦

日本人にとっては慚愧に絶えない過去を経験した月と言えます

過去という昔日にひとくくりには出来ない重いものです



敗戦を終戦と言い

原爆投下の地獄の日を平和祈念の日戸いう



言葉たくみな上書きに抵抗を感じます

核の傘の下

核拡散の平和条約に批准すらできない

この国の芯棒はどこにあるのでしょう

拭いてすぐ曇る眼鏡や原爆忌 伊藤仙女

2020-08-06 | 今日の季語


拭いてすぐ曇る眼鏡や原爆忌 伊藤仙女


眼鏡を拭いても拭いてもまた曇る
暑さのせいではない
この日は全人類の懺悔の日なのだ
開けてなならないパンドラの箱の紐を引いてしまった日なのだ
正視できない光景が目前に広がっていた
愚かな人類を確認する日でもある
(小林たけし)


【原爆忌】 げんばくき
◇「原爆記念日」 ◇「広島忌」 ◇「長崎忌」
昭和20年8月6日に広島、9日長崎に原子爆弾が落とされた日。30万人の命が失われた未曾有の惨事を二度と繰り返すまいという祈りを込めて、この日広島と長崎では犠牲者への追悼の式典が行われる。「広島忌」「長崎忌」

例句 作者

原爆忌ぬかづきてみな無帽なる 宮下翠舟
雀来て原爆の日の水たまり 山本雅子
ごくごくと白湯飲む朝や原爆忌 美谷島寸未子
十一時二分わたしの祷り長崎忌 山崎芳子
原爆忌の睡り誘ふ夜風欲し 楠本憲吉
竹とんぼ遠くへ飛んで広島忌 北村菜々子
ひろしま忌一基の墓を母校とす 赤松蕙子
鎮魂の火の穂短かし広島忌 藤井艸眉子
ピカソノフクロウガヒロシマヲアルイタ 白石司子
朝焼がやけにヒロシマ焦がしている 白石司子

必要な嘘は透明雁渡し 田付賢一

2020-08-05 | 今日の季語


必要な嘘は透明雁渡し 田付賢一

初秋の海風をうけながら作者は
人気のない浜に佇んでいるようだ
嘘を隠した後味の悪さも時空を経て今はもう納得している
その心根を「透明」と表意したのだろう
この句の眼目はここにある
(小林たけし)


【雁渡し】 かりわたし
雁が渡ってくる9月、10月ごろ吹く北風。志摩・伊豆地方の漁師たちに伝わる言葉といわれるが、北国においてもその風情は感じられる。

例句 作者

たそがれの無縫の海を雁渡し 小檜山繁子
なまなましき風倒木や雁渡し 小林千代子
みみずくの小さな土鈴雁渡し ひらきたはじむ
七つ島は岩礁なれや雁渡し 水原秋櫻子
旗竿に旗なき山頂青北風過ぎ 瀧春樹
瓦礫より音声菩薩雁渡し 安西篤
生きてゐるうちは老人雁わたし 八田木枯
草木より人翻る雁渡し 岸田稚魚
透析のおとうとへ文雁渡し 上嶋稲子
陸よりも海はしなやか雁渡し 小宅容義
雁渡しぎいんと言葉カーブする 白石司子

かさぶたのいまだ乾かず八月来る 根岸たけを

2020-08-04 | 今日の季語


かさぶたのいまだ乾かず八月来る 根岸たけを

6日9日15日 あの戦争終期の八月
心に吹き上がった血糊は
瘡蓋となってしっかりと残っている
八月になるとその瘡蓋が疼いて来る
この胸騒ぎのような潰瘍は命尽きるまで続くと知っている
(小林たけし)



【八月】 はちがつ(・・グワツ)
初旬に立秋を迎えることから、俳句では8月は初秋とされる。夏休や盂蘭盆の月でもある。秋とはいえまだ日照りは強く暑気も強く、ときに激しい夕立や雷雨がある。そんな中でかすかに感じる秋を詠むことは俳句の妙味であろう。

例句 作者

ご褒美をあげたい八月十五日 前田弘
さまざまの忌日噴火する八月 赤堀睦枝
だまって草むしっている八月の軍手 天野靜鬼
リヤカーで八月の海売り歩く 永井潮
九条へいま八月の白い指 高遠守
八月がゆくたくさんの手を握り 青木栄子
八月が来る母の忌も姉の忌も 沢田改司
八月の 自覚症状はまるでゲリラ 永井徹寒
八月のうぐひす幽し嶽の裏 渡邊水巴

再会にはねあがる語尾葛ざくら たけし

2020-08-02 | 入選句






再会にはねあがる語尾葛ざくら たけし



7月31日 ㈮ 朝日新聞栃木俳壇 

石倉夏生先生の選をいただきました



久々の第1席で華人が喜んできれました

葛ざくら 葛桜 くず桜 の表記に迷いましたが

表記に落ち着きました



過分な評をいただきました


八朔や今日あきらかに風に色 吉田成子

2020-08-01 | 今日の季語



八朔や今日あきらかに風に色 吉田成子

旧暦の八月でなければ成り立たない句
初秋の空に新しい色をみた
夏空とは明らかに違う風と空の色
(小林たけし)

【八朔】 はっさく
◇「八朔の祝」
陰暦八月朔日の略。陽暦では9月初旬に当たる。農作業も終わり、秋の稔りを期待する時期で、八朔盆、八朔節供、たのみの節供などの行事が行われた。

例句 作者

八朔や扨明日よりは二日月 蕪村
八朔の酔野に出でてさめにけり 高田蝶衣
雲井なる富士八朔の紫紺かな 飯田蛇笏
八朔やあかつきかけてつよき雷 新保旦子
八朔や東に生れて礼うとき 大石香代子
八朔や馬ことわりて徒でゆく 西野草几