独創性(2010.11.12日作)
世の中に真に独創的なものなど存在しない
総ては人々が営々と築き上げて来た叡智
知識の上に成り立つものであり
その上書きにしか過ぎない
だからと言って今現在
様々に創り出されているものに価値が無い
という事にはならない 何故なら
その時代には その時代にしかないものが有り
その時代にしかないものが初めて 人類
人間が営々と築き上げて来た知識の上に付け加えられ
見事に表現された時には それは
新しいものであり
価値を持つものとなる
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いつか来た道 また行く道(27)
何人かの来訪者と会って商談も進めた。
輸入するハンドバッグの広告の為、広告会社の社員とも会った。
その日一日で溜まっていた仕事も大筋、方が付いた。
翌日には思いも掛けない自由な時間が得られた。
午前中の仕事を済ますと午後からの仕事を秘書に託してⅠ時過ぎに事務所を出た。
専務の高木は外出中で特別な言付けも秘書には託さなかった。
わたしの動きは誰にも知られたくはない !
心は固まっていた。迷いはなかった。気持ちの落ち着きと共に冷静な判断力も戻っていた。
一旦、自宅へ帰って服装を変えた。
ジーンズのスラックスに厚手の茶のセーター、化粧を落として素顔にした。
ジーンズのスラックスに厚手の茶のセーター、化粧を落として素顔にした。
イヤリングも、ダイヤを散りばめた指輪も外して、何処にでも見られる普通の主婦の印象にした。
目元を隠す為にぼかしの入った薄茶の度なしの眼鏡を掛けた。
普段、強い日差しを避ける為に使っている眼鏡だったが、地味造りの服装には少し不自然に思えた。でも、仕方がなかった。素顔をさらす勇気はない。
そのあと、薄手の手袋とビニール袋を用意した。ビニール袋は中沢の部屋にまだ残されていると思われる写真やネガフィルムを探し出して入れる為だった。中沢の上着から取り出した財布に入った合鍵も持った。
自宅を出たのは三時少し過ぎだった。
タクシーを利用した。
免許証から住所を探した出した中沢の居たアパートは中央区新川にあった。
狭い路地の奥にある古ぼけた建物を探すのに苦労した。
灰色にくすんだ二階建ての木造アパートは中央の玄関入口を中心に一、二階それぞれ左右に四つずつの部屋を持っていた。
そのどれもの窓が閉じられていて人の気配が感じられなかった。
門扉のない薄汚れたブロック塀に囲まれた入口からそれでも人目を気にしながら入ると急いで玄関に向かった。
三メートル程の距離だった。
玄関に入ると左右にそれぞれ下駄箱が備えられていて名前が書かれていた。
その上には郵便受けらしきものもあった。
中沢の名前を探すと建物の左手、二階の部屋の一番奥が中沢になっていた。
依然として建物の中に人の気配は感じられなかった。
働き盛りの独身者ばかりが住む建物なのかと思ってみたりもした。
玄関を上がると平底のパンプスを手に持ってすぐに中央にある階段を昇った。
二階廊下を左手へ向かうと突き当りに薄れかけた墨で中沢栄二と書かれた表札の室があった。
茶色の汚れた合板扉にはくすんだ色の真鍮のノブが付いていた。
下には鍵穴があった。
その鍵穴を見て愕然とした。丸い穴の下に小さな切れ込みのある形式のものだった。
中沢の持っていた合鍵にはこの形式に会うものはなかった。総てが板状のものだった。一目で判断出来た。
それでもポケットから合鍵を取り出して確かめてみた。
やはり合う形はなかった。
困った事になった !
途方にくれた。鍵穴を見詰めたまま呆然としていた。
まさか扉を破って押し入るわけにはゆかない。
ふと気が付いて誰かに見られていないか振り返った。
依然として静まり返った建物の中、廊下に人影は見られなかった。
試みに部屋の中に誰か居ないか、小さくドアを叩いてみた。
中からの反応はなかった。
ノブに手を掛け、廻してみた。
ドアも動かなかった。
一旦、ドアの前から離れた。
人目を警戒して階段の方へ戻った。
階段を降りて手にしていたパンプスを下に置き足を入れようとした時、中沢と書かれた郵便受けの文字が眼に入った。
途端に頭の中を過ぎるものがあった。
もしや、郵便受けの中に入ってやしないか ?
早速、郵便受けに手を延ばし、留め具をひねって開けてみた。
中は広告のチラシでぎっしりと埋まっていた。
中沢の長い不在を証明するもののように思えた。
普段、中沢がどのように行動していたのかは分からなかったが、昨日や今日の不在で放ったらかしにされた郵便受けのようには思えなかった。
広告はそのままにして手を差し込み、中を探った。
右の片隅に微かに手に触れる堅いものがあった。
握ってみると紛れもなく合い鍵状のものだった。
これだ ! と思った。
すぐに手を引いて取ったものを見てみると紛れもなくドアの鍵穴と一致する合い鍵だった。
小躍りしたい程の喜びだった。そのまま郵便受けの蓋を閉めて階段を駆け上った。
合い鍵で開けて入った部屋は四畳半の狭い部屋だった。
台所らしきものはあったがトイレはなかった。
薄汚れた布団が二つ折りにされて片隅に放り出してあった。
間口半間程の押し入れを開けてみると、二段になった上には毛布や衣類が雑多に押し込められていて、下には様々な物の入ったダンボール箱や踵の取れて破けた革靴などが積み重ねられてあった。
写真やネガフィルムは十四五センチ程の四角い段ボール箱に入れられていた。
取り出してみると、よくもまあ、こんなに、と思える程の写真やネガフィルムだった。
その写真やフィルムはそのままビニール袋に詰め込んだ。
中には見知らぬ女性の顔も散見されて、わたしのものばかりではないらしい事が分かった。
それでもかまわずに詰め込んだ。
その箱が空になると他の箱も探してみた。
幾つもの箱が破けた下着や漫画雑誌、スポーツ新聞、即席ラーメンの空容器などで埋まっていた。
全部の箱を探し終えた時にも、怪しげな写真やネガフィルムは見付からなかった。
よし、これでいいだろ・・・納得する思いと共に、麻薬に関するものの何一つ見付からない事に気が付いて、不思議な思いに捉われた。クスリに関しては彼が細心の注意を払っていたらしい事が、なんとなく理解出来た。
気が付いた時には、部屋の中は既に薄闇に包まれていた。
こんな時間になってしまった !
慌てる気持ちと共に急いで掻きまわした後を整えて押し入れを閉めた。
そのまま薄汚れた布団が隅に寄せられてある異臭のこもった部屋を出た。
誰かに見られた気配はなかった。
首尾は上々だ、とほくそ笑む思いだった。
急いで玄関へ戻ると、パンプスがそこに置かれたままになっているのに気が付いてギョッとした。
誰かがこれを眼にしなかっただろうか ?
でも、今更、仕方がなかった。そのまま急いで足を押し込むと合い鍵を元の場所に戻して逃げるようにして玄関を出た。
誰にも会わずにアパートを出る事が出来た。
門を出ると小走りに路地を走って大通りへ出た。
タクシーを探しながら足早に歩いた。
ようやく来たタクシーを捕まえて座席に腰を埋めた時には思わず安堵の溜息を漏らしていた。
写真もネガフィルムもビニール袋と共にマンションの敷地内にある焼却炉に投げ込んだ。
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桂蓮様
リッチな家 なんとなく想像出来ます
アメリカ ヨーロッパなどの映画を観ますと
日本人の感覚からすると宮殿なのかと思われるような豪邸が
しばしば登場します きっと あのような家なのだろうなと思っています
いずれにしても住めば都で多少貧しくても不便でさえなければ
住み慣れた場所が一番いいのではないでしょうか
高望みをすれば限(きり)がないですものね
新作 拝見しました
苦痛がないのにビックリ その感覚 理解出来ます
心が解き放されたような軽やかさを覚えますよね
それにしても長い苦痛から解き放されて良かったです
何事もその動きに任せ 無理は禁物 無理は必ず反作用を伴いますね
良い御文章です まさしく真実です
一つの正しい事に辿り着くまでには何事に限らず
出だし 基本が大切ですね 基本の出来ていない事は
土台のない建物と一緒で必ず何処かで崩れ ボロが出て来ます
バレーに限らずなんでもそうだと思います
改めて自覚している次第です
大雨 昨日のこちらの新聞にもニューヨークが大雨だと出ていました
日本でも所によっては大雨による災害が数多く出ています
でも わたくしの居る所では雨が少なく夏の間は屋上にある花木への水やりが
大変でした とりわけ暑かった今年の夏 体力的にもさすがに応えました
大変でした とりわけ暑かった今年の夏 体力的にもさすがに応えました
今は幾分その暑さも収まり なんとなくホッとしているところです
お気遣い戴き 有難う御座います
どうぞ桂蓮様も御無理をなさらず楽しんでバレーをお続け下さい
有難う御座いました
takeziisan様
今回も様々 楽しませて戴きました
悲しき・・・・ 少年兵とクラウンは知りませんでした
インデアン 森山加代子 懐かしいですね
まだ幼い面影 坂本九 共にもうこの世には居ない
夢のようです
ダソイ わたくしの方ではソダイ(そうだ)という言葉は使いますが
ダソイは知りません それに へっこめろ
やはりお国のほうの言葉遣いでしょうか 初めて聞きます
ひっこめろ がわたくしには耳慣れた使い方です
それにしても方言にはそれぞれの地方の匂いがあっていいものだと思います
ゴーヤジャム まさに贅沢 羨ましい限りです
大腸がんを手術していますの野菜はほぼ食事の中心になっています
勿論 肉 魚 大豆などタンパク質も欠かしませんが
それだけに新鮮な野菜は羨ましいです
トウワタ 初めて見ます 美しい花です
わが家では三日ほど前に今年二回目の月下美人が開花しました
なにしろこの花は夜ふけの花で朝方にはしょぼんとした姿を見るばかりです
以前 この欄にも掲載しましたが
月下美人は艶な花
香りと姿で魅惑する
だけどおまえは寂しい花
夜ふけにひとり そっと咲く
というところです
それに今はタマスダレの白が雨ごとにどんどん増えて
わが家の屋上を彩っています
名月 こちらでは見られました
ワクチン 一度もやっていません
むしろ副作用の方を怖れています
ここだけの話し・・・・・
打ち明け話しは相手を選ばないと・・・・
川柳 毎回 楽しく拝見させて戴いております
楽しい記事共々 有難う御座いました
「いつか来た道、また行く道」
大きな禍根を残した人間の心理、機械のようにある瞬間に、リセットすること等不可能なことで、生涯、心身を悩ますことになるんでしょうね。
うまく立ち回ろうとすればするほど、日常の小さな言動に、ボロが出るんじゃないかという、不安と緊張がつきまとい、次第に破滅に向かっていく?・・というような筋書きになるんでしょうか。各シーンの細かな心理描写、臨場感を感じます。