――どうもバランスが悪い。真ん中に来てない。左足寄りに過度に重心がかかったまま、動かせない。徐々に痛みが酷くなってくる。
左側の男の足が邪魔になって、足が自由に動かせず身体が斜めになったままなのだ。もし今電車が急停車したらこらえ切れない。みっともない形(ひっくりかえる)で倒れる予感。
僅かに動かせる左足のつま先で、相手に気持ちが伝わるように力を込めてつっつく。しかしエアーズロックのように微動だにしない。
「もう、なによ、この足? 頭くるわ」と、呟いて女性の場合は我慢するだろうが、私の場合は違う。
「な、なんだ、こいつ? …ざけんなよ、ケンカ売ってんのか?(買うつもりもないが)」と、心でつぶやき、もう一度左足の指先に念を入れて挑戦してみる。
だめだ、頑として動かない。
――全く妥協、遠慮、親切、優しさというものを持っていないやつだ。
薄目で隣を見る。
むっ、、、? えてしてこういう輩は、強い!! 腕力が強い!! それを武器にしているから、こういう場面は絶対に引き下がらない。
仁王様にはかなわないと見るや私は他に活路を見出そうとする。
が、……諦めて、結局不自然な恰好のまま、なんとか終点に到着。
左側が筋肉痛。