隣の女性が後ろを振り向く。確かに後ろの若い男性のヘッドフォンはうるさく、辺りに迷惑な音を撒き散らしている。しかし、そうではないようだ。時々、女性は身体をよじる。
私は、少しドキっとする。
そしてそっと窺う。 が、男の左手は吊り革に、右手はぶらんと下げていて何もしていない。
女性に若い男の何処かが触れたのかもしれない。そして若い女性は意識が集中するあまり、ちょっとしたことにも、異変と感ずるようになっているのかもしれない、と自己判断。
もし、あまりひどいようだったら男の手を掴もう、と頭の中の思考回路はでぐるぐると回った。
電車の中も、アニキン爺さんのように、もう何ものにも全く反応しなくなったという者だけが乗れば、電車の中も平和になるのになー、と思う。
私はまだ若いが、その域に達するように修行中だ。