マックィーン、最後の雄姿
この映画は、その機敏な身のこなしで希代のアクションスターとなったスティーブ・マックィーンの遺作です。彼はこの映画で、現代に生き残った実在の賞金稼ぎ“パパ”ことラルフ・ソーソンを演じています。見どころは、もちろんアクション場面なのですが、撮影中、すでにがんに侵されていた彼の動きに往年の切れはありません。
そればかりか、あのマックィーンが老眼鏡を掛け、車の駐車に何度も失敗し、屋根から屋根へのジャンプを躊躇し、走りながら息を切らせるシーン…、そして「疲れた」「年を取った」と弱音を吐くセリフなどが目立ちます。こちらは「何もそこまで見せなくとも…」と思うのですが、実はこうしたシーンにこそ「俺は最後まで頑張るぜ」という彼一流のメッセージが込められているのです。そして衰えた姿をさらしながら、スターとしてのイメージを観客の心に刻み続けるため、病と闘いながら撮影した彼の役者根性に心を打たれます。
映画は、生まれたばかりでくしゃみをしたわが子に「ゴッド・ブレス・ユー(お大事に)」と声を掛け、観客に向かって振り向くマックィーンのストップモーションで幕を閉じます。これは観客に向けた彼の遺言だったのではないでしょうか。
クールな役を演じることが多かったマックィーン。そのせいでしょうか、この映画のパパというキャラクターは、彼が演じた役の中で、最も人間臭くて正直なものとして心に残ります。スティーブ・マックィーンがフィルムに刻み付けた最後の雄姿を堪能してください。ミシェル・ルグランの素敵な音楽も耳に残ります。