『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』(84)
時系列を無視して錯綜させたユニークな手法
この映画の舞台は、1920年代から60年代のニューヨーク。ギャング団を組織して成り上がったユダヤ系の少年たちが、やがて破滅に至る姿を半世紀にわたって描いた壮大な叙事詩です。
彼らの少年期、青年期、老年期を時系列を無視して錯綜させ、友情、裏切り、苦悩、恋を描くという手法はとてもユニークなのですが、見終った後は、分かったような分からないような妙な気分にさせられるのも否めません。それは、あたかもロバート・デ・ニーロ扮するこの映画の主人公ヌードルスがアヘン窟で見た夢幻のようです。
セルジオ・レオーネの思わせぶりな演出は冗漫で、バイオレンスやセックスのシーンもストレートで過激なのですが、トニーノ・デリ・コリのセピア調の撮影とエンニオ・モリコーネの哀切極まる音楽が、全てを美しい青春の思い出のように転化させ、何だかとてもいい映画を見たような錯覚に陥ります。そのおかげで何度もこの映画を見てしまった人も多いはず。そんな、麻薬のような、妖しい魅力や不思議な磁力を持った映画なのです。