『プレイス・イン・ザ・ハート』(85)(1985.4.23.新宿武蔵野館)
登場人物への愛情が画面からあふれる
1980年代のアメリカ映画の一つの傾向性として家族や農場への回帰主義が多く見られます。その代表作となったのがこの映画です。
30年代の米南部、夫を失ったエドナ(サリー・フィールド)と幼い息子と娘、借金のかたに銀行から世話することを押し付けられた盲人のウィル(ジョン・マルコビッチ)、流浪の黒人モーゼ(ダニー・グローバー)というハンデを負った者たちが、数々の苦難を乗り越えながら農場を守り、確かな共同体を築いていく様子が描かれます。
この映画の最も素晴らしい点は、監督・脚本のロバート・ベントンの登場人物たちへの愛情が画面からあふれてくるところです。名手ネストール・アルメンダリスの撮影もそれを助長します。それ故、もうこれ以上誰も不幸にさせたくないと感情移入させられてしまうのです。
そして、この映画のハイライトはラストの教会のシーンに訪れます。ファーストシーンで殺されてしまったヒロインの夫、彼を誤って殺し、白人に私刑にされた若い黒人、KKK団の迫害に遭って街を去ったモーゼ、と、映画の中から消えていった彼らを再登場させ、カーテンコールを行うのです。ベントンの登場人物たちに対する愛情の深さや家族の絆への思いがこのシーンに集約されています。
アカデミー賞では、ベントンが『クレイマー、クレイマー』(79)に続いて脚本賞を、フィールドも『ノーマ・レイ』(79)に続いて主演賞を受賞しました。