田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

『ワーロック』

2016-02-14 23:45:44 | 映画いろいろ



善悪の境目とは…

 無法者がはびこるワーロックの町の人々は、自衛のために腕の立つクレイ・ブレイスデル(ヘンリー・フォンダ)を保安官として雇うことに。札付きの賭博師モーガン(アンソニー・クイン)と共に町に現れたクレイは、銃を手に、力で町を粛清していく。だが、町の人々は、無法者の一味から改心し、保安官補となったギャノン(リチャード・ウィドマーク)に信頼を寄せるようになり、クレイの立場は微妙なものになっていく。

 この映画をテレビで初めて見たのは中学生の頃。当然、クレイとモーガンの同性愛的な関係や、保安官を選んだ町民が、逆に彼を裏切るという皮肉なテーマの奥に込められた監督エドワード・ドミトリク自身の心象風景(赤狩りの密告者となった)などは分からなかったから、何か妙に暗い、変な西部劇だなあと思いながら見ていた。

 ところが、今あらためて見直すと、確かに癖はあるが思いのほか面白く見られた。クレイとモーガンの関係は『荒野の決闘』(46)のワイアット・アープとドク・ホリディのようだし、保安官の孤独、町民の裏切りという点では『真昼の決闘』(52)のパロディ的な要素もある。フォンダがドロレス・マイケルズに向かって「マアム」と呼び掛けるたびに、アープがクレメンタインに言ったそれと重なって何だかおかしな気持ちにもなる。

 ところで、この映画ではかろうじて残っている善悪の境目が、この後の西部劇ではもっと曖昧で分かりにくいものになっていく。西部劇衰退の一因はこうした変化にもある気がする。

現代の『ワーロック』『バットマンVSスーパーマン ジャスティスの誕生』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/6d10d4da25119ec36da6891f34c08b0b

 

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『刑事ジョン・ブック/目撃者』 (85)

2016-02-14 09:00:37 | All About おすすめ映画

切ないダンスシーンのおかげで優れた恋愛映画に



 偶然、殺人事件を目撃してしまった少年とその母親を守るため、文明から隔絶したアーミッシュの村に潜入する刑事ジョン・ブック(ハリソン・フォード)の活躍を描きます。

 この映画のポイントは、それまでアクション派の印象が強かったフォードが感情を抑えた演技を見せる点。加えて、アーミッシュという特異な宗教集団の存在を描いたところが、母子とヒーローというありふれたストーリーに厚みを持たせています。

 監督のピーター・ウィアーは、都会人のジョンとアーミッシュの生活との対比を丁寧に描き、心が通じ合いながらも決して結ばれない関係のやるせなさや切なさを強調しました。

 中でも、カーラジオから流れるサム・クックの「ワンダフル・ワールド」に合わせて、思わず踊り出してしまうジョンと少年の母(ケリー・マクギリス)とのコミカルかつ切ないダンスシーン(くっつきそうになっては離れ、また…の繰り返し)が、二人の置かれた状況や心の内を象徴しているかのようで印象に残ります。このシーンがあるために、この映画は優れた恋愛映画としての側面を持つことができたのです。

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