野球が生む奇跡とは
アイオワで農場を営むレイ(ケビン・コスナー)は、ある日「それを造れば彼はやって来る」という声を聞き、畑を壊して野球場を造ります。すると、往年の名選手“シューレス”・ジョー・ジャクソンが現れて…。
W・P・キンセラの『シューレス・ジョー』をフィル・アルデン・ロビンソンが監督・脚色。映画化するのは難しいと思われた抽象的な原作を、鮮やかなファンタジー映画にまとめ上げました。
野球、トウモロコシ畑、家族の絆は古き良き時代のアメリカの象徴。そしてファンタジーや奇跡、夢の実現はかつてのアメリカ映画が十八番とした題材です。この映画は、そうしたアメリカの善や美徳を素直に描き、80年代末によみがえらせたことでも記憶に残ります。
ジャクソンも、ラストに姿を見せるレイの父も、同じことをレイに尋ねます「ここは天国かい」と。レイは「ここはアイオワさ」と答えますが、「天国とは夢がかなう場所のことだ」と気付くのです。
この映画では、野球の持つスピリチュアルな部分が、家族の絆と奇跡とを媒介する役割を果たしています。夜の霧やアイオワの風景を見事にとらえたジョン・リンドレーの撮影、ジェームス・ホーナーの心に残る音楽、球場内に響く心地良い“野球の音”…などが印象に残ります。
コスナーのほか、妻役のエイミー・マディガン、シューレス・ジョー役のレイ・リオッタ、隠棲した作家役のジェームズ・アール・ジョーンズ、これが遺作となった老医師役のバート・ランカスターらがそろって妙演を見せてくれるのも大きなポイントです。
なお、八百長事件で球界を追われたジャクソンたちについては、『エイトメン・アウト』(88)が詳しく描いていますので、興味がある方はこちらもぜひどうぞ。