田中雄二の「映画の王様」

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『ファンダンゴ』(85)

2016-02-08 09:00:27 | All About おすすめ映画

ベトナム戦争の影を感じさせる、苦みを持った青春群像



 スティーブン・スピルバーグが主宰するアンブリン・エンターテインメントが初めて製作したのがこの青春映画でした。タイトルはスペイン語で「バカ騒ぎ」の意。舞台は1970年代初頭、青春の終焉を拒絶し、大学卒業後に直面する徴兵・就職・結婚などの諸問題からの一時の逃避を試みた若者たちの姿を描いたロードムービーです。

 主演はスターになる前のケビン・コスナー。監督は、後にコスナーの『ダンス・ウィズ・ウルブズ』(90)で第二班の監督を務め、『ロビン・フッド』(91)『ウォーター・ワールド』(95)も監督したケビン・レイノルズ。この映画が彼の監督デビュー作です。オープニングのエルトン・ジョンの「土曜の夜は僕の生きがい」、キャロル・キングの「イッツ・トゥ・レイト」など、時代を彩った名曲を効果的に使っています。

 この映画の特徴は、旅の端々にベトナム戦争の影を感じさせるところ。それ故、ありふれた青春群像にちょっとした苦味が加わっています。ジョージ・ルーカスの『アメリカン・グラフィティ』(73)がベトナム戦争以前の60年代の青春群像劇の代表作なら、この映画はベトナム以後の70年代のそれに当たるのかもしれません。公開当時は、たかだか10年前の70年代がすでにノスタルジーの対象になるのかという感慨が強く残りました。今見れば、その何倍も懐かしさを感じることでしょう。

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