田中雄二の「映画の王様」

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『ナチュラル』

2016-02-17 09:17:36 | All About おすすめ映画

『ナチュラル』(84)

野球は伝説に包まれたスポーツだ

 中年を過ぎてニューヨーク・ナイツに入団した“遅れてきたルーキー”ロイ・ハブス(ロバート・レッドフォード)。彼が手製のバット“ワンダーボーイ”で快打を連発します。一躍チームは優勝戦線に加わりますが、ハブスの過去にはある秘密が隠されていました。

 「ナチュラル」とは天性の才能のこと。ハブスのモデルは八百長事件に巻き込まれて球界を追われた実在の名選手“シューレス”・ジョー・ジャクソンです。彼は『フィールド・オブ・ドリームス』(89)にも登場しますが、「ナチュラル」というタイトルには、天賦の才を持ちながらキャリアの途中で選手生命を絶たれたジャクソンを惜しむ気持ちが込められています。

 バーナード・マラマッドの原作は、ハブスが破滅する悲劇で終わりますが、この映画の監督のバリー・レビンソンは「野球は伝説に包まれたスポーツだ」と考え、脚本のロジャー・タウンと共にハッピーエンドに変更しました。それ故この映画は、アメリカンドリームの達成を描く、壮大なほら話や伝説のヒーロー譚を復活させる先駆けとなりました。

 ランディ・ニューマンのジャズエイジ風の音楽、クラシカルな雰囲気を醸し出したキャレブ・デ・シャネルの撮影で1920年代の雰囲気を再現。学生時代は野球選手だったというレッドフォードの打撃フォームの美しさ、ゲームシーンのリアルさも相まって、ベースボール・ムービーの最高傑作となりました。

 ファーストシーンとラストシーンで、田園風景の中で行われる父と子のキャッチボールがこの映画のテーマを象徴します。アメリカ人にとって野球は単なるスポーツではなく、父から子へと継承すべき大切なものなのです。

 余談ですが、長嶋一茂はこの映画を見て、プロ入りを決意したそうです。

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