『アマデウス』(84)(1986.1.4.キネカ大森)
天才と凡人の間とは…
この映画は、大作曲家ウォルフガング・アマデウス・モーツァルト(トム・ハルス)の後半生を、同時代の音楽家サリエリ(F・マーレー・エイブラハム)の目を通してフィクションを織り交ぜながら描きます。
ピーター・シェーファーの戯曲を基に、ミロシュ・フォアマンが監督しました。映画の主な舞台となるのはウィーンですが、ほとんどの撮影はフォアマン監督の故郷であるチェコのプラハで行われました。
この映画のモーツアルトは、演じたハルスのケタケタ笑いに象徴されるように、変人として描かれています。彼の本質は誰からも理解されず天才故の孤独感を抱いています。その姿はまるで現代のポップスターのようでもあります。
一方のサリエリは常識人。モーツアルトの才能の豊かさを見抜き、彼に憧れますが、同時にその才能を憎みます。天才と凡人との対比が見事に描かれます。淀川長治さんはモーツアルトとサリエリの関係を千利休と豊臣秀吉になぞられていました。
そして多くの人々は自分と同じ凡人であるサリエリの方に共感を抱くのです。演じたエイブラハムはアカデミー賞の主演賞を受賞しました。
もちろん、劇中には「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」「フィガロの結婚」「ドン・ジョバンニ」「魔笛」「レクイエム」など、モーツアルトが作曲したさまざまな曲がふんだんに登場します。特に、モーツアルトと父親の関係を象徴した「レクイエム」が印象に残ります。