田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

『ザ・コール 緊急通報指令室』

2016-02-05 11:00:21 | 映画いろいろ

『ザ・コール 緊急通報指令室』(13)

いい拾い物をしたような気分になる

 謎の男に誘拐された少女(アビゲイル・ブレスリン)からの通報を受けた、911(緊急通報指令室)のオペレーター(ハル・ベリー)が、少女の声だけを頼りに奮闘する姿を描く。

 前半は、911の仕事を紹介しながら、一度救助に失敗し、トラウマを抱えるオペレーターと、走る車のトランクの中に閉じ込められた少女の視点で話が進んでいく。スピード感に満ちた新種の追い掛け劇としての面白さで見せる。

 後半は猟奇的な犯人を中心にした『サイコ』(60)『羊たちの沈黙』(91)思わせるスリラーへと転化する。前半に比べると少々“失速”するのが残念だが、全体的には、94分の中に幾つもの山場を展開させたB級サスペンスの良作だと言える。昔、面白いB級映画を見つけて、いい拾い物をしたような気分になったことを思い出した。

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『ビッグ』

2016-02-05 08:56:07 | All About おすすめ映画

『ビッグ』(88)

いつまでも子供心や遊び心を忘れずに

 背の低さに悩む12歳の少年ジョシュは、カーニバルで魔法の機械「ゾルダー」を見付け「大人になりたい」と願を掛けます。すると翌朝、中身は12歳のままで体だけが大人になって…というトム・ハンクス主演の傑作ハートウォームコメディです。監督はペニー・マーシャル、脚本はスティーブン・スピルバーグの妹のアンが執筆しています。それ故、女性ならではの繊細な視点が随所に見られます。

 初めはあり得ない状況に戸惑い、しっかり者の親友ビリーに助けられていたジョシュですが、やがておもちゃ会社の社長(ロバート・ロッギア)に気に入られて就職し、子供らしい自由な発想で大活躍を見せます。ハンクスとロッギアが足踏みピアノで楽しそうに「ハート・アンド・ソウル」を弾く場面が、子供心や遊び心を忘れずに、というこの映画のテーマを象徴します。

 そしてキャリアウーマンのスーザン(エリザベス・パーキンス)も、純粋な心を持ったジョシュに惹かれていきますが、やはり大人と子供というギャップは埋まりません。ラストで「一緒に子供に戻らない?」というジョシュに、「私はもう、その時代を生きてしまったから…」と答えるスーザンの姿が何とも切なく映りますが、ジョシュをちゃんと子供に戻してあげるところがこの映画の粋なところなのです。

 “大人子供”の役が似合うハンクスが、後の『フォレスト・ガンプ/一期一会』(94)にも通じる無垢な心を持ったキャラクターを演じて、この映画で初めてアカデミー賞の主演賞にノミネートされました。

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