ここにも野球が…

世界を滅ぼすという伝説の巨人の来襲を信じる少女バーバラ(マディソン・ウルフ)は、奇異な言動で周囲から孤立するが、実は彼女の行動の裏にはある秘密があった…。製作クリス・コロンバス、デンマーク出身のアンダース・ウォーター監督によるダークファンタジー。
前半と後半でこれほど印象が変わる映画も珍しい。前半は暗い画調の中、バーバラが周囲に対して取るいけ好かない態度にいらいらさせられ、やるせない気分になる。ところが後半、バーバラが抱える屈折の理由が分かると、一転、彼女が健気に見えて、愛おしくすら感じられるようになる。このあたり、原作・脚本のジョー・ケリーの作劇が見事だ。
また、この映画は、同じく今年公開された『ワンダー 君は太陽』を陽とすれば、その裏返しの陰として、対をなすところがある。主人公が少年と少女という違いこそあれ、どちらもハンディを持った思春期前の子供と周囲の関わり、あるいは子供たちの心の成長を真摯に描いているからだ。
ところで、この映画には野球ファンにはたまらないエピソードが描かれていた。バーバラは巨人退治の武器を「コヴレスキー」と名付けている。そのコヴレスキーとは、20世紀初頭に実在したメジャーリーグの投手ハリー・コヴレスキー(Harry Coveleski)のことなのだ。

コヴレスキーは、フィラデルフィア・フィリーズ時代の1908年に、ニューヨーク(現サンフランシスコ)・ジャイアンツ相手に、5日間で3連勝したことから「ジャイアンツ・キラー」というニックネームがついたという。日本で言えば、巨人をお得意さんにする中日か広島の投手といったところか。
この映画の原題は「I KILL GIANTS」なので、コヴレスキーのニックネームと重なるが、実はそれだけではない。なぜ、100年以上も前の投手の名前がこの映画で重要な意味を持つのかは、ネタバレになるので書けないが、その意味を知った時は、『フィールド・オブ・ドリームス』(89)のムーンライト・グラハムのエピソードを思い出した。わざわざこのエピソードを入れ込んだジョー・ケリーは相当な野球マニアであるに違いない。
そのコヴレスキーは、1907~09年にフィリーズ、10年にシンシナティ・レッズに所属したものの、メジャーとマイナーを行ったり来たりの投手で、11年からの3年間はマイナー暮らしに甘んじた。ところが、デトロイト・タイガースでメジャーに復帰した14年から、3年連続で20勝以上を挙げているから驚く。メジャー通算は9年間で81勝55敗という成績だから、大投手というわけではないのだが、一瞬の活躍で「ジャイアンツ・キラー」というニックネームを頂戴し、こうして100年後の映画に登場するのだから、人生は面白い。
こういうことを調べる時には『BASEBALL Encyclopedia』が役に立つ。
『MacMillan The Baseball Encyclopedia』と『フィールド・オブ・ドリームス』↓
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/151dc06d69746634b1ec9cb8575efc40

世界を滅ぼすという伝説の巨人の来襲を信じる少女バーバラ(マディソン・ウルフ)は、奇異な言動で周囲から孤立するが、実は彼女の行動の裏にはある秘密があった…。製作クリス・コロンバス、デンマーク出身のアンダース・ウォーター監督によるダークファンタジー。
前半と後半でこれほど印象が変わる映画も珍しい。前半は暗い画調の中、バーバラが周囲に対して取るいけ好かない態度にいらいらさせられ、やるせない気分になる。ところが後半、バーバラが抱える屈折の理由が分かると、一転、彼女が健気に見えて、愛おしくすら感じられるようになる。このあたり、原作・脚本のジョー・ケリーの作劇が見事だ。
また、この映画は、同じく今年公開された『ワンダー 君は太陽』を陽とすれば、その裏返しの陰として、対をなすところがある。主人公が少年と少女という違いこそあれ、どちらもハンディを持った思春期前の子供と周囲の関わり、あるいは子供たちの心の成長を真摯に描いているからだ。
ところで、この映画には野球ファンにはたまらないエピソードが描かれていた。バーバラは巨人退治の武器を「コヴレスキー」と名付けている。そのコヴレスキーとは、20世紀初頭に実在したメジャーリーグの投手ハリー・コヴレスキー(Harry Coveleski)のことなのだ。

コヴレスキーは、フィラデルフィア・フィリーズ時代の1908年に、ニューヨーク(現サンフランシスコ)・ジャイアンツ相手に、5日間で3連勝したことから「ジャイアンツ・キラー」というニックネームがついたという。日本で言えば、巨人をお得意さんにする中日か広島の投手といったところか。
この映画の原題は「I KILL GIANTS」なので、コヴレスキーのニックネームと重なるが、実はそれだけではない。なぜ、100年以上も前の投手の名前がこの映画で重要な意味を持つのかは、ネタバレになるので書けないが、その意味を知った時は、『フィールド・オブ・ドリームス』(89)のムーンライト・グラハムのエピソードを思い出した。わざわざこのエピソードを入れ込んだジョー・ケリーは相当な野球マニアであるに違いない。
そのコヴレスキーは、1907~09年にフィリーズ、10年にシンシナティ・レッズに所属したものの、メジャーとマイナーを行ったり来たりの投手で、11年からの3年間はマイナー暮らしに甘んじた。ところが、デトロイト・タイガースでメジャーに復帰した14年から、3年連続で20勝以上を挙げているから驚く。メジャー通算は9年間で81勝55敗という成績だから、大投手というわけではないのだが、一瞬の活躍で「ジャイアンツ・キラー」というニックネームを頂戴し、こうして100年後の映画に登場するのだから、人生は面白い。
こういうことを調べる時には『BASEBALL Encyclopedia』が役に立つ。
『MacMillan The Baseball Encyclopedia』と『フィールド・オブ・ドリームス』↓
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/151dc06d69746634b1ec9cb8575efc40