田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

バート・レイノルズが亡くなった

2018-09-07 11:33:15 | 映画いろいろ
 レイノルズといえば、わがリアルタイムの1970年代が全盛期。『ロンゲスト・ヤード』(74)、『ハッスル』(75)、『タッチダウン』(77)、『トランザム7000』(77)、『グレートスタントマン』(78)など、マッチョを生かしたアクションと、『ラッキー・レディ』(75)、『ニッケル・オデオン』(76)、『結婚ゲーム』(79)『キャノンボール』(81)などのコメディの両面で活躍したから、思い出深い人ではあるのだが、大好きな俳優、というわけではなかった。何か脂っこい感じがして、どちらかと言えば苦手なタイプだったのだ。



 ところが、彼が監督も務めた『シャーキーズ・マシーン』(81)でイメージが変わった。レイノルズはお得意の刑事役を演じているが、監督として、ヒロイン役のレイチェル・ウォードを魅力的に見せたのに加えて、ビットリオ・ガスマン、ブライアン・キース、チャールズ・ダーニング、アール・ホリマン、バーニー・ケイシー、そしてヘンリー・シルバら、彼と絡む多彩な脇役たちの味も生かした。そんなこの映画を見て、勝手に、俳優仲間を大事にする彼の人柄の良さを垣間見た気になったのだ。それ以来、オレの中での彼のベストはこの映画なのである。

 『外国映画男優名鑑』(98)で彼のミニバイオグラフィーを書いたことも懐かしい。

コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『チューリップ・フィーバー 肖像画に秘めた愛』

2018-09-07 08:48:25 | 新作映画を見てみた
“西洋版の落語”



 舞台は、17世紀オランダのアムステルダム。チューリップの球根売買がバブル景気を呼んだ時代。貧しい画家のヤン(デイン・デハーン)は、富豪のコルネリス(クリストフ・ヴァルツ)から、自身と若妻のソフィア(アリシア・ヴィキャンデル)の肖像画製作を依頼される。やがてヤンとソフィアは恋に落ち、ヤンは新生活を夢見てチューリップ市場への投資を始める。そんな中、女中のマリア(ホリディ・グレインジャー)の妊娠を知ったソフィアは一計を案じるが…。

 監督ジャスティン・チャドウィック、脚本トム・ストッパード。17世紀のアムステルダムの街並みやコスチュームの再現、絵画のような画調も見どころだが、決して高尚な話ではない。人間の色と欲の滑稽と哀れ、だます者とだまされる者の表裏一体の姿が生み出す悲喜劇、ナレーター=語り部の存在という点では、落語の世界をほうふつとさせるからだ。タイトルも何だかパチンコみたいだし…。

 例えば、同じ頃、日本は江戸時代の初期。珍しい花の種が人気を呼ぶ中、大店の主人の後妻となった尼寺出身の若妻が浮世絵師と恋に落ちる。そこに、2人の秘密を知った女中、出入りの魚屋、女郎や悪徳町医者が絡んできて…でも話は成り立つ。

 しかも、この映画は、登場人物の皆に何となく収拾がつき、実はヒロインはソフィアではなく、語り部のマリアだったという皮肉な落ちがつくところまで落語にそっくりなのだ。というわけで“西洋版の落語”として楽しんだ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする