1960年代、とある豪華ホテルに現れた、おしゃれで上品な美女(アン・ハサウェイ)の正体は邪悪な大魔女(グランド・ウィッチ)だった。魔女たちの頂点に立つ彼女は、子どもたちをネズミに変えることを企んでいた。ところが、一人の少年が偶然魔女たちの集会に紛れ込み、その計画を知ってしまう…。
ロバート・ゼメキス監督の作品傾向には、正統派の『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズや『フォレスト・ガンプ/一期一会』(94)とは別に、『世にも不思議なアメージング・ストーリー』の「真夜中の呪文」(86)や『ロジャー・ラビット』(88)、『永遠に美しく…』(92)、そして最近の『マーウェン』(18)へと続く、ブラックでグロテスクな系譜がある。
この映画の場合は、ロアルド・ダールの原作の味や、脚本ギレルモ・デル・トロの趣味も反映されているのだろうが、ストーリーはもとより、魔女やネズミの造形が不気味で、見ていて心底楽しめない。こうしたブラックファンタジーにおける、日本と欧米との感覚の違いを、改めて知らされた感がある。
音楽はゼメキスの盟友アラン・シルベストリ。両親を亡くした主人公の黒人少年を祖母(オクタビア・スペンサー)が励ますシーンに流れる、「リーチ・アウト・アイル・ビー・ゼア」(フォートップス)、「ドック・オブ・ベイ」(オーティス・レディング)、「イッツ・ユア・シング」(アイズレー・ブラザーズ)はなかなか良かった。さすがに『バック・トゥ・ザ・フューチャー』や『フォレスト・ガンプ/一期一会』で、ヒット曲を巧みに挿入して成功した、ゼメキス、シルベストリのコンビだけのことはあると思った。
ハサウェイの変身ぶりを見ていると、シャーリーズ・セロンもそうだが、向こうの女優たちは本当に化けるのが好きなんだなあと思う。それにしても、スペンサーはあんなに太って大丈夫なのか、とちょっと心配になった。
未見だが、同じくダールの『魔女がいっぱい』を原作とした『ジム・ヘンソンのウィッチズ/大魔女をやっつけろ!』(90)がある。ここではアンジェリカ・ヒューストンが大魔女を演じたというから、これはぴったりか。
ダールの同じ原作を使った2本の映画が、時を経て地味から派手に変わったという意味では、『夢のチョコレート工場』(71)と『チャーリーとチョコレート工場』(05)と同じパターンだ。