『TENET テネット』(TOHOシネマズ日比谷)
クリストファー・ノーラン監督の話題作を、遅ればせながらやっと見た。『ダンケルク』(17)公開の際のインタビューで、「監督の頭の中をのぞいてみたい」と言ったら、苦笑いされたが、この映画も、再びそう言いたくなるような代物だった。
大まかに言えば、特殊部隊員の名もなき男(ジョン・デビッド・ワシントン)が、未来から「時間の逆行」と呼ばれる装置でやって来た敵と戦うミッションと、未来を変えるという謎のキーワード「TENET(テネット)」を与えられ、第3次世界大戦の阻止に奮闘する、という話。
ここで描かれている現象は、タイムリープのように時間軸のAからBへと移動するのではなく、時間をさかのぼることを差す。つまり、1週間前に戻るには、1週間逆行し続けなければならないのだ。で、劇中で時間の逆行と順行が入り乱れることになる。これは映像的には面白いが、確かに頭の中が混乱してくる。
ただ、最初に、名もなき男に“逆行”を教える女性科学者が「理解しようとしないで。感じるのよ」と、まるで『燃えよドラゴン』(73)のブルース・リーのようなセリフを話すが、これはノーランが観客に向かって吐いたセリフだとも言える。『ダンケルク』が、見るのではなく“体感する映画”だったように、この映画は、理解するのではなく“感じる映画”なのだろう。
ラストに、黒幕が誰であるかなど、一応一通りの種明かしはしてくれるので、何となく分かったような気分にはなるのだが、見終わった後で反すうすると途端にもやもやしてくる。特にいろいろとディテールや伏線が気になり始め、こちらも時間を逆行させて、もう一度最初から見たくなってくる。と、見事にノーランの術中にはまってしまった。
敵役のケネス・ブラナーはちょっとくさいが、相棒役のロバート・パティンソンがなかなかよかった。
【インタビュー】『ダンケルク』クリストファー・ノーラン監督
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【ほぼ週刊映画コラム】『ダンケルク』
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神や超常現象は人間の内面に存在する『インターステラ―』(14)
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夢の夢を描いた『インセプション』(10)
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『テネット』の元祖とも言うべき『メメント』(00)
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