先日、ニュース番組でのさだまさしへのインタビューを見ながら、この映画のことを思い出した。
『翔べイカロスの翼』(80)(1981.1.23.ゴールデン洋画劇場)
カメラマン志望の青年が、サーカスの写真を撮るうちに魅せられて自らも入団。ピエロとなって活躍し、サーカスのスターとなるが、最後は事故死する。実話を基にした映画で、主演と音楽はさだまさし。監督は森川時久、脚本は松山善三。
さだはちょっと置いて、団長役のハナ肇、母親役の奈良岡朋子、尾藤イサオ、橋本功、そして宮口精二、曾我廼家五郎八といった脇役たちが皆好演を見せる。
特に、昔ピエロだった老人を演じた五郎八がすごかった。娘(倍賞美津子)の情夫(蟹江敬三)に突き飛ばされ、ケーキに顔をめり込まされ、クリームだらけになった顔で「これが道化だ。自分の体を痛めてひと様を笑わす。これが道化だ」と語るシーンには鬼気迫るものがあった。
さて、主演のさだだが、驚くなかれなかなかの好演を見せる。素人がサーカスに入ったらあんな感じだろうなという雰囲気を醸し出し、初めは興味本位だった主人公が、段々とサーカスにのめり込んでいく様子を素直に演じていた。
そして、街の子どもに「昨日のピエロ死んだんだろ」と聞かれた団長の子が「生きてるよ!」と答えるバックに、突然「笑ってよ君のために~」と「道化師のソネット」が流れ出す…。そんなラストシーンに思わず泣かされてしまった。
正直なところ、さだまさしはちょっと苦手なタイプなのだが、『二百三高地』(80)の主題歌「防人の詩」や、この「道化師のソネット」を聴くと、彼が優れた音楽家であり、詩人であることだけは素直に認めざるを得ないと思う。
松山善三の脚本の力もあり、サーカスと言う特異な世界を舞台にした、青春ドラマとして、あるいは群像劇として、なかなかいい映画になっていると思う。ピエロの動きにチャップリンの姿が重なって見えた。