『ロイ・ビーン』(71)(1981.2.20.ゴールデン洋画劇場)
おかしくて、楽しくて、でもちょっと悲しいこの映画の主人公は、西部開拓時代末期に、自らを法律と称し、勝手に判事になって、好き勝手なことをやってのけたロイ・ピーン(ポール・ニューマン)。
どこか憎めない男で、トランプ好きのくせにやれば必ず負け、メキシコ人の年下女房には頭が上がらない。荒くれ者を勝手に保安官に任命し、リリー・ラングトリーという女優にうつつを抜かしている。ところが、結構腕も立つし、才覚もまあまあある。そんな男を、ニューマンが、彼独特のひょうひょうとした演技で見事に演じている。
というわけで、前半は、何でもビーンの思い通りになって、見ているこちらも楽しくなってくる。ところが、ガス(ロディ・マクドウォール)といううさんくさい弁護士の登場とともに、段々と雲行きが怪しくなってくる。
折しも、鉄道が開通し、ビーンたちのところへも文明の波が押し寄せてきた頃である。まともにその波を食ったビーンは妻を失い、放浪の旅に出る。
その間、彼の町はガスに乗っ取られ、石油採掘に湧き、もはやかつての面影はどこにもない。保安官だった男たちも、職を追われ、惨めな暮らしをしていた。
そこにビーンが帰ってくる。そして彼らは、男のプライドと正義の名において、ガス一味もろとも町を焼き払い、元の荒野へと戻して去っていく。
そしてラストは、ビーンが終生憧れ続けながら、一べつもできなかったリリー(エバ・ガードナー)が、今は記念館となったビーンの酒場を訪れ、彼が書いた手紙を読んで涙するところで終わる。
自分は、ビーンと仲間たちが生き残って祝杯をあげるという楽しいラストを望んだのだが、そこは夢の挫折を描くことを得意とするジョン・ヒューストン。時代の波に取り残された男たちへのはなむけのようなラストシーンにしていた。
ビーンの妻役がいい感じだったので調べてみたら、何と『大地震』(74)に出ていたビクトリア・プリンシパルだった。最近見掛けないが、どうしているのだろうか。