『浜の朝日の嘘つきどもと』(2021.8.15.オンライン試写)
福島県南相馬に実在する映画館を舞台に、映画館の存続に奔走する一人の女性(高畑充希)の姿を描いたタナダユキ監督のオリジナル脚本作。
100年近くの間、地元住民の思い出を数多く育んできた映画館・朝日座。だが時代の流れには逆らえず、支配人の森田保造(柳家喬太郎)は廃館の決意を固める。
そこへ、東京からやってきた茂木莉子(もぎりこ)を名乗る若い女性が現れる。彼女は映画好きの亡き恩師(大久保佳代子)の願いをかなえるため、朝日座を立て直すというのだが…。
山田洋次監督の『キネマの神様』、松本壮史監督の『サマーフィルムにのって』に続いて、映画や映画館への愛を描いた映画がまた登場した。
タナダ監督には2度インタビューをしたが、その言葉の端々に、映画への愛や映画の力を信じる心が感じられた。その意味では、この映画は震災やコロナ禍での映画や映画館に対する、タナダ監督自身の思いを反映させたものだと言ってもいいだろう。
劇中に登場する映画は、DW・グリフィス監督の『東への道』(20)、バスター・キートン監督・主演の『文化生活一週間/キートンのマイホーム』(20)、増村保造監督の『青空娘』(57)、瀬川昌治監督の『喜劇女の泣きどころ』(75)、そしてホアン・シー監督の『台北暮色』(17)。
そういえば、最初のインタビューの時に、「増村保造の映画が好きだ」と言っていたことを思い出したが(だから映画館主の名前も保造なのか)、ほかにも上映作品の看板やセリフの中に、映画に関するネタがちりばめられている。
ところで、この映画は、2020年に放送された福島中央テレビ開局50周年記念のテレビドラマ版の“前日談”に当たるというので、早速ドラマの方も見てみたら、対で見た方がさらに面白いと感じた。これなら2本立てで上映するのもありだ。
ちなみに朝日座で上映した2本立ては、
『青空娘』と「喜劇女の泣きどころ』
『大誘拐』(91)と『グラン・トリノ』(08)
『永遠と一日』(98)と『北京原人』(97)
『浮雲』(55)と『放浪記』(62)
『ベルリン天使の詩』(87)と『天使にラブソングを…』(92)
テレビ版では
『生きる』(52)と「素晴らしき哉、人生!』(46)だった。
『ビッグイシュー日本版70号』
女性映画監督に聞く『赤い文化住宅の初子』(07)
【インタビュー】『ロマンス』(15)タナダユキ監督
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/4d7e05dd00e7817c523fc63b6cdc0531