田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

『プリティ・リーグ』

2016-04-08 08:46:31 | All About おすすめ映画

『プリティ・リーグ』(92)

彼女たちの誇りと勇気について

 この映画の原題は「彼女たちのリーグ」。第二次大戦中に実在した今は幻の女子プロ野球リーグを扱った珠玉のスポーツ映画です。こうした埋もれた話をきちんと掘り出してきて再評価するところが、いかにもアメリカ的でいいなあと思えますし、アメリカ野球のすそ野の広さを感じさせます。

 スポーツ映画の一番の見どころは、何と言っても試合の場面ですが、この映画では、ジーナ・デイビス、ロリ・ぺティ、ロージー・オドネル、マドンナら、女優たちがきちんと野球をプレーしていて素晴らしいです。監督も女性監督のペニー・マーシャル。まさにウーマン・パワーの炸裂といった感じです。

 とは言え、トム・ハンクス扮する監督、デビッド・ストラザーンのマネージャー、ジョン・ロビッツのスカウト、脚本を書いたロウエル・ガンツ&ババルー・マンデルと、男性陣も負けてはいません。その意味では、男女どちらかの側に立つこともなく、とてもバランスの取れた映画だとも言えます。

 かつての“本物の選手たち”が登場するラストシーン。バックにはマドンナが歌う「ここが私のプレーグラウンドだった」が流れます。この映画のテーマを的確に表した名曲です。この映画は、コミカルな味わいの奥に女性差別に対する怒りを潜ませ、選手たちの誇りや勇気、芯の強さを見事に描き出しました。

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『ふたりの桃源郷』佐々木聰監督に取材

2016-04-07 23:48:08 | BIG ISSUE ビッグイシュー



 本作は、電気も水道も通わない中国地方の山中で暮らす田中寅夫さんとフサコさん夫婦と、彼らを支える家族の姿を、25年にわたって追い続けたKRY山口放送の人気テレビドキュメンタリーシリーズを一本の映画としてまとめたもの。二人の姿を通して、生きがい、家族、老い、死などについて問い掛ける。映画版では吉岡秀隆がナレーションを担当。

 本作を見ながら、土や土地へのこだわりや執着という意味では『風と共に去りぬ』(39)を、山でしか生きられない者の矜持と哀しみという意味では『デルス・ウザーラ』(75)を思い出した。

詳細は後ほど。

『ふたりの桃源郷』のホームページは↓
http://kry.co.jp/movie/tougenkyou/media.html

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『トゥルーマン・ショー』(98)

2016-04-07 08:36:20 | All About おすすめ映画

生活の全てをテレビで生中継された男



 この映画の主人公は、生まれた時から生活の一部始終をテレビで生中継されているトゥルーマン(ジム・キャリー)。住んでいる町はセットで、両親も妻も隣人も皆俳優が演じています。見世物になっていることを彼だけが知らない…という奇抜なアイデアが秀逸な、ピーター・ウィアー監督のファンタジー・コメディです。

 この映画の真骨頂は、コメディでありながら、トゥルーマンの孤独はもとより、現実の世界も常に誰かに仕組まれているのでは、という怖さを感じさせるところ。

 また、エド・ハリス扮する番組のプロデューサーが、あたかも創造主=神のごとく描かれている点が、キリスト教社会のアメリカを象徴するようで興味深く映ります。

 このように、ファンタジーの形を借りて深いテーマを描くのは、アメリカ映画が最も得意とする手法の一つなのです。

 ラストでは、テレビのライブショーによって人生を操作されていたトゥルーマンが、その秘密を知って、自立していきます。この映画は、彼の半生を通して、人間はどう生きるべきなのかという問い掛けを発してくるのです。

 『マスク』(94)の顔面芸から脱皮して、無垢な主人公の心情を巧みに表現したキャリーの演技も見どころです。

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『シェーン デジタルリマスター版』トークイベント

2016-04-06 09:33:02 | 仕事いろいろ

 4月9日(土)丸の内TOEI2で『シェーン デジタルリマスター版』の初回上映後に、ウエスタン・ユニオンを代表してトークイベントを行うことになりました。



『シェーン デジタルリマスター版』のホームページは↓
http://shane-movie.jp/

丸の内TOEI2のホームページは↓
http://theaters.toei.co.jp/theaters/marunouchi1/

ご興味のある方はぜひご参加ください。

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『エド・ウッド』(94) 

2016-04-06 09:21:29 | All About おすすめ映画

史上最低の映画監督の半生



 B級C級を遥かに飛び越えて“Z級”の映画を作り続けた、史上最低の映画監督エド・ウッド。彼の半生を、監督ティム・バートン、主演ジョニー・デップの名コンビが描き、演じました。

 映画監督としての才能には全く恵まれなかったエドですが、彼自身は傑作が撮れると信じて映画を作り続けます。大いなる勘違いともいえるその姿は滑稽に映りますが、同時にいじらしく、切なく、悲しくもあります。

 バートンは、女装趣味があるなど奇人の部類に入るエドを、ひたすら映画に情熱を傾ける愛すべき人物として捉え、ドラキュラ俳優のベラ・ルゴシ(マーティン・ランドー)との友情、風変わりな仲間たちとの映画作りにユーモアとペーソスをあふれさせました。

 彼らの群像を通して、私たちは映画作りの現場や舞台裏を垣間見る楽しさを味わうことができるのです。バートンの異形の者への思い入れ、デップの変装好きの一面が、エドへの共感となって表れた映画でもあります。

 ところで、この映画を見て、実際にエド・ウッドが監督した映画にも目を通してみたいと思ったあなた。見る時には大いなる勇気と忍耐が不可欠であることをお忘れなく。

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『デーヴ』

2016-04-05 08:29:58 | All About おすすめ映画

『デーヴ』(93

現代によみがえった政治コメディ



 この映画の主人公は、小さな職業斡旋所を営む好人物のデーヴ(ケビン・クライン)。米大統領とそっくりな彼が“パートタイム”で大統領の“影武者”に雇われます。そんな折、大統領が愛人との秘密の情事の最中に意識不明の重体に。側近たちは急場をしのぐためにデーヴに“常勤”を申し出ます。

 ところが、一般市民のデーヴの目から見ると政治の世界はおかしなことばかり。彼は普通の考え方で政策を見直していきます。やがて周囲の人々や大統領夫人(シガーニー・ウィーバー)もデーヴの不思議な魅力に引かれていき…。

 クラインが、お人好しのデーヴと憎々しい大統領の二役を見事に演じています。また、珍しくチャーミングなウィーバーのほか、ベン・キングスレー(副大統領)、フランク・ランジェラ(大統領補佐官)、ヴィング・レイムス(護衛官)、ケヴィン・ダン(報道官)、チャールズ・グローディン(会計士) ら、デーヴを取り巻く脇役たちの活躍も見逃せません。

 この映画には、政治とはかくあるべき、政治家にはこうあってほしいという願望が込められています。それはアメリカの理想主義を描いたフランク・キャプラ監督の名作『スミス都へ行く』(39)『群衆』(41)にも通じるテーマです。アイバン・ライトマン監督はそうした精神を、政治コメディとして現代によみがえらせたのです。

 

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『男はつらいよ』の桜

2016-04-04 08:57:52 | 男はつらいよ

 『男はつらいよ』(69)は、水元公園の桜をバックに、寅=渥美清の名調子で幕が開く。

桜が咲いております。懐かしい葛飾の桜が、今年も咲いております



 昨日は、その水元公園で花見としゃれ込んだ。

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【ほぼ週刊映画コラム】『蜜のあわれ』

2016-04-02 16:20:28 | ほぼ週刊映画コラム
エンタメOVOに連載中の
『ほぼ週刊映画コラム』

今週は

普遍的なテーマを内包したエロチックな寓話
『蜜のあわれ』



名台詞は↓

「人を好きになるということは、愉しいことでございます。」
by赤井赤子(二階堂ふみ)

詳細はこちら↓

http://tvfan.kyodo.co.jp/feature-interview/column/week-movie-c/1043607
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『恋はデジャ・ブ』(93)

2016-04-01 09:02:54 | All About おすすめ映画

時間のループを描いた傑作



 年に一度、ペンシルバニアの田舎町で行われる聖燭祭(グラウンドホッグ・デー=原題)のリポートをすることになった高慢な天気予報士のフィル(ビル・マーレー)が主人公。

 この地でフィルは、朝目覚めるたびに1日がリセットされ、理由も分からぬままに毎日同じ日を繰り返すという悪夢に見舞われます。何度も金持ちになり、恋をし、人助けをしても、また初めからやり直す空しさ。誰も自分を覚えていない孤独、そして幾度も訪れる死の恐怖と苦痛…など、フィルが体験する出来事がコミカルかつシニカルに描かれていきます。

 監督・脚本は『ゴーストバスターズ』(84)などで俳優としても活躍したハロルド・ライミス。映画の「テイク~(シーンの撮り直し)」の手法を利用して時間のループを描いた傑作に仕上げています。この映画を見ると、人間は明日の予測がつかないからこそ生きていけるのでは? と思わずにはいられません。実際の人生には撮り直しはないのですから。最初は憎々しげなマーレーが徐々にいい奴に変化していくところが見ものです。

 また、ケン・グリムウッドの『リプレイ』という時間のループを描いた小説が、この映画に影響を与えたともいわれています。興味のある方はこちらもぜひご一読を。

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