田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

『男はつらいよ 知床旅情』

2019-12-12 09:17:21 | 男はつらいよ
『男はつらいよ 知床旅情』(87)(1987.11.13.新橋文化)


 最近のこのシリーズは、寅さん=渥美清の老けが目立って、段々と見るのがつらくなってきたのだが、今回はおいちゃん(下條正巳)、おばちゃん(三崎千恵子)、タコ社長(太宰久雄)、御前様(笠智衆)といったレギュラー陣の老けも目立って、ますます見るのがつらくなった。
 
 ところが、それと同時に、このシリーズの新たな魅力も発見した。それは、そこに帰ればいつも変わらぬ景色があり、同じ人々がいる、という現実にはあり得ない“夢”を描き続けているということ。盆暮れの年2回、まるで故郷に帰るような気持ちで見続けている人たちがたくさんいるということだ。
 
 改めて発見した、と書いたが、それは山田洋次がシリーズを継続していく上で一貫したテーマとして描き続けていることであり、こちらも以前から気付いてはいたのだが、ここ数年、自分の周りから大切な人々が去っていった現実が、このテーマをより強く感じさせたのだろう。
 
 年月とともに、自分も周囲も否応なく変化していく。だから、せめてこのシリーズの中だけは、いつまでもみんなが変わらなくいてほしい。今回はそんなふうに感じさせられた。最近のシリーズには、愛着故の不平不満ばかり述べてきたのだが、今回は妙に心に浸みた。
 
 また、マドンナの存在とともに、シリーズを支えているのが、寅さんとゲストとのからみだが、今回は三船敏郎と淡路恵子という、大物を配したこともあり、久しぶりに渥美清が乗っている感じがしたのも良かった。
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『男はつらいよ 幸福の青い鳥』

2019-12-12 06:15:21 | 男はつらいよ
『男はつらいよ 幸福の青い鳥』(86)(1987.1.30.銀座文化)


 『キネマの天地』(86)が間に入ったので、1年ぶりの寅さんとなった。年に2作という驚異的なペースに、そろそろ限界が感じられる今日この頃にあって、この間隔はシリーズを続けていくための打開策になるかもしれない、と淡い期待を持ったのだが…。
 
 確かに、今回も山田洋次の巧さで、ある程度は楽しめる。だが、最近のパターンの一つである寅さんと若い世代とのからみがどうもいけない。若者とからむ寅さん=渥美清は、その表情や動きからも、年を取ったことを証明してしまうし、もはやマドンナとは対で成り立たず、単なる保護者や物分かりのいいおじさんに見えてしまう。対する若者たち(志穂美悦子、長渕剛)も、山田洋次の弱点であるきれいごとで済まされていている気がして、あまりなじめない。
 
 これまで、このシリーズから受けたさまざまな思いから、シリーズ終了まで見届ける義理がある、と勝手に思っているのだが、そこに、老いていく寅さんや、シリーズ継続に無理を重ねるスタッフ、キャストの苦労はこれ以上見たくないという、ファンとしてのエゴが出てきてしまうのもつらいものがある。
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『男はつらいよ 柴又より愛をこめて』

2019-12-11 15:02:42 | 男はつらいよ
『男はつらいよ 柴又より愛をこめて』(85)(1987.12.28.)


 今回は、マドンナの栗原小巻が離島の教師を演じている。寅さん版の『二十四の瞳』といった感じで、山田洋次がシリーズ内でよく描く、寅さんと学校とのからみがここでも描かれているが、現代の若者像も含めて、少々甘い気がしないでもない。
 
 それは、最近のこのシリーズに感じ始めた、変わらぬ故郷や家族に対するいとおしさとは別に、常に感じる歯がゆさとも似ている。これは、もはや寅さん一人のエピソードでは成り立たなくなったシリーズの限界を示しているのかもしれないし、山田洋次の弱点を露呈している気もする。
 
 ところで、このところ、タコ社長(太宰久雄)の娘の朱美役で美保純が出ているが、ドラムの役割を果たしてきた社長に元気がなくなってきたことと、レギュラー陣の動きが緩くなったので、そのカンフル剤的な役目を期待しているのだという。確かに、この映画は朱美で持っているところもある。
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【インタビュー】『カツベン!』周防正行監督、成田凌

2019-12-11 10:13:54 | インタビュー
 
「これが映画の始まりなんだ、ということを、意識して見てほしいです」
https://tvfan.kyodo.co.jp/feature-interview/interview/1207143
   
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『ジュマンジ/ネクスト・レベル』

2019-12-11 06:50:51 | 新作映画を見てみた
  
 
 
 前作で、ゲーム内の試練を生き抜いた4人のティーンエージャー。大学生になった彼らが、再び「ジュマンジ」の中に入り込んでしまったスペンサー(アレックス・ウルフ)の救出作戦を行う。
 
 ところが、ゲームキャラのブレーブストーン博士(ドウェイン・ジョンソン)、オベロン教授(ジャック・ブラック)、フィンバー(ケビン・ハート)、ルビー(カレン・ギラン)はそのままだが、今回はスペンサーの祖父(ダニー・デビート)と彼の友人(ダニー・グローバー)もゲームに紛れ込んでしまい、デビートがジョンソンに、グローバーがハートにといった具合に、ルビー以外は、それぞれが、前回とは別のキャラに乗り移ることになり、そこから生じるおかしさが見ものとなる。
 
 舞台は前回のようなジャングルではなく、砂漠、市場、吊り橋、氷におおわれた山塞と目まぐるしく変化していく。そして、このシリーズは、エンドレスゲームというか、ネバーエンディングストーリーの様相を呈してきた。今後はクリスマスのたびに、ジュマンジが帰ってくるというパターンになるのかな。
 
【ほぼ週刊映画コラム】『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/9b34a027da2de7b172d5495a5690a248
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『宇宙戦争』

2019-12-10 11:44:05 | 映画いろいろ
『宇宙戦争』(05)(2005.7.18.品川プリンスシネマ)


 「『宇宙戦争』は、スピルバーグが『激突!』(71)の頃の恐怖に戻っただけ…」という映画評を読んだ。確かに『未知との遭遇』(77)『E.T.』(82)で、それまで敵対、侵略というイメージが強かった異星人を、あえて友好や友情という視点から描いてみせた彼が、何故いまさら古典に戻ったのかという点に興味があったのだが、もともと彼は『激突!』や『ジョーズ』(75)、あるいは『ジュラシック・パーク』(93)で観客を大いに怖がらせていたのだ。
 
 なるほど、その延長線上に『宇宙戦争』を置けば分からないことはないか。まあ見てみないことには話しにならないが。
 
 というわけで、品川プリンスシネマのレイトショーで『宇宙戦争』を見た。
 
 見てみると、これまでスピルバーグがさまざまな映画の中で用いてきた手法が、いろいろな形で盛り込まれた作品になっていた。
 
 例えば、冒頭の姿なき恐怖の見せ方は『激突!』や『ジョーズ』、容赦なくたたみかけ、見る者を一気に極限状態に引き込む手法は『プライベート・ライアン』(98)、未知の巨大なるものに対するカメラ・アングルは『未知との遭遇』、トム・クルーズのピンチの連続からの脱出劇は『インディ・ジョーンズ』シリーズといった具合。
 
 中でも、最も近いのは『ジュラシック・パーク』のタッチだろうか。いずれにせよ、映像や音の使い方、色使いなどはさすがにうまい。ラストの失速と、取って付けたような家族の再生劇に多少の不満は残るものの、同時多発テロを経験したアメリカが抱く“見えない恐怖”を最初に具体化した映画であり、悪夢を映像化した映画としても忘れ難いものとなった。
 
 そのスピルバーグが『宇宙戦争』についてのインタビューで、興味深いコメントをしていた。
 
 「1970~80年代には、空を見上げて美しいと思ったが、今は緊張し恐怖を感じる。現代は、ここ数十年で恐ろしい場所になった。私の映画は、その時代を反映する。今、気楽な映画を作るのは無責任だと思う」
 
 「(H・G・ウェルズの原作は)宇宙人の侵略に託して、社会批判が込められているから、世の中が不安になると注目を集めてきた。出版は19世紀末の英国の植民地支配の時代、(オーソン・ウェルズの)ラジオ劇は第二次大戦の直前、初の映画化は冷戦の最中。そして今、9.11の影におびえている」

 なるほどと思ったら、今度はロンドンで多発テロが起きた…。
 
     
 
【インタビュー】『レディ・プレイヤー1』スティーブン・スピルバーグ監督
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/0252d427482eb27bb9e501c5b7b8acce 
 
【コラム】「1980年代が再びブームに スピルバーグの映画から」
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/85e114aac84e6082e0b867b9fbf80cd5
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『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』 のんにインタビュー

2019-12-10 09:56:29 | 仕事いろいろ
 『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』の、のんにインタビュー。
 

 ついでに「スペシャルライブ付き特別試写会」を取材。
https://tvfan.kyodo.co.jp/news/topics/1207741
 
 『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/f00547298647c7c4bc6b12076f7f5f96
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『男はつらいよ 旅と女と寅次郎』

2019-12-10 06:13:58 | 男はつらいよ
『男はつらいよ 旅と女と寅次郎』(83)(1983.8.22.蒲田ロキシー)


 今回は、本物の都はるみと、彼女が演じた歌手のイメージが重なり過ぎて、何だか『男はつらいよ』を見た気がしない。寅さんが脇役になってしまっているのだ。ここまでくると、いよいよ労作尽きた感がある。
 
 マドンナに都はるみ、という話を聞いた時から嫌な予感はしていたのだが、これでは以前よく作られていた歌謡曲映画とあまり変わらない。今までのシリーズが保ってきた味を消してしまったと言っても過言ではない。
 
 一体、山田洋次は何を意図してこの映画を作ったのだろうか。それはシリーズ31作ともなれば、マンネリも、ネタ切れもやむを得ない。むしろ、ここまで一定のレベルを保ってきたこのシリーズの出来には驚くべきものがあるのだが、苦しさのあまりとはいえ、いまさら寅さんの世界に、有名人の孤独や悲哀を描くことに何のプラスがあったのか、という疑問が拭えなかった。 
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『男はつらいよ 花も嵐も寅次郎』

2019-12-09 23:23:30 | 男はつらいよ
『男はつらいよ 花も嵐も寅次郎』(82)(1983.1.8.蒲田ロキシー)


 久しぶりにからっとした寅さんと会うことができた。それにしても、驚くべきかな! よく30作も作ってきたものだ。まあ、だからといって妙に気負ったところもなく、強いて言えば、第一作で描かれたさくら(倍賞千恵子)と博(前田吟)のなれそめが懐かしく語られるところが、30作記念といったところだろうか。
 
 それに今回は、寅さんが若い2人(沢田研二、田中裕子)の結び役として描かれていたから、ここのところ、マドンナと対した際に寅さんが見せる老いの悲しさも、あまり感じずに済んだ。ただ、何だか物分かりがよくなった寅さんはいただけない気がするし、ジュリーが演じた純情青年の姿はあまりにも現実離れしているのではないか、と感じさせられたのは否めない。
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『チャーリーとチョコレート工場』

2019-12-09 10:30:50 | 映画いろいろ
『チャーリーとチョコレート工場』(05)(2005.7.22.丸の内ピカデリー チョコレートの匂い付き完成披露試写会)

  

 

 ウォンカという板チョコに入っているゴールデンチケットを引き当てた5人の子どもたちがウィリー・ウォンカ(ジョニー・デップ)が経営する謎のチョコレート工場に招待される。ガイド役はウィリー自身。そこで彼らが目にする奇想天外な出来事とは…というファンタジー。
 
 原作ロアルド・ダール、監督ティム・バートン、主演ジョニー・デップということで、もっとブラックなものを想像していた。確かに陽気ではないが、思いのほか楽しめた。なによりCGを使った工場内の異様な風景と、そこで働くウンパ・ルンパ(ディープ・ロイ)という同じ顔をした小人の集団の歌や踊りが愉快で、いつしか自分もこの工場を見学している気になってくる。
 
 また、ダニー・エルフマンのさまざまなジャンルを取り入れた音楽が素晴らしい。そして、これまでのティム・バートンの映画ではいちばん明るいのではないかと思わされながらも、相変わらずバートン流の趣味や、楽屋落ちも健在で、今回は、牙で人の血を吸うドラキュラ役で有名なクリストファー・リーに、歯医者(ウィリーのトラウマの原因となる父親)を演じさせているところがいかにも面白い。
 
 さてこの話、実はかつて『夢のチョコレート工場』(71)のタイトルで映画化されており、その時ウィリーを演じたのはジーン・ワイルダー。彼もエキセントリックな役を得意にしていたから、こちらも面白いかもしれない。
 
 
 
【インタビュー】『ダンボ』ティム・バートン監督
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/18754cbd4bb244f2cb6b7f0e7a1a7348
 
『夢のチョコレート工場』

 ちょっと気になったのでオリジナルの『夢のチョコレート工場』をDVDで見てみた。どちらかといえば、自分は圧倒的にクラシック映画派で、CGの使い過ぎにも懐疑的なのだが、今回はあらゆる意味でティム・バートン版の方が遥かに素晴らしいと感じた。
 
 オリジナルはCGなど想像も出来なかった71年の作品だから、比べてしまうのは少々かわいそうなのだが…。というよりこちらはアンソニー・ニューリーとレスリー・ブリッカスによるミュージカルという色合いが濃くて、嫌でも時代差を感じてしまう。
 
 とはいえ、劇中で地味に歌われる「陽気なキャンディ・マン」が、サミー・デイビスJR.の歌によって一人歩きの大ヒットを記録するという副産物を生んでいる。日本でも「ピンポンパン」で、石毛恭子さんが歌っていたことを懐かしく思い出した。
 
  
 
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