硝子戸の外へ。

優しい世界になるようにと、のんびり書き綴っています。

恋物語。86

2021-08-07 21:38:57 | 日記
「ドリンク何がいい? 僕がとってくるよ。」

加持君が席を立つ。ボヤっとしてて、気後れしてしまった。

「あっ、ごめん。えっと、ホットココア。」

「ホットココアね。じゃあ、待ってて。」

「ごめん・・・なさい。」

また、彼に気を使わせてしまった。私って本当にバカ。彼の背中を目で追いかける。
彼の気持ちはすごくうれしい。でも、確かなものが欲しい。それが、欲張りなのも分かってるけど、頭の中だけじゃ、もやもやするだけ。

「どうぞ、ホットココアだよ。」

私の前に、緩やかに湯気を立てているホットココアが差し出される。彼は、ドクターペッパー。

「寒いのに、冷たい飲み物? 」

「うん。ピザとポテトフライなら、この組み合わせが最高だよ。」

「あっ、そっか。たしかに暖かい飲み物じゃ、合わないね。」

「でしょ。」

そう言うと、すごくおいしそうにドクターペッパーを一口飲む。

「村主さんは、受験勉強進んでる? 」

うっ。いきなり苦手とする質問。でも、サボってるわけじゃないし、計画的に進めてるし、後ろめたさはない。今日はわがまま言っちゃったけど。

「うん。とりあえず志望校の合格ラインに留まるように努力してるよ。加持君みたいに国立大を目指すわけじゃないから、何とかなってるって感じ。加持君はほぼ毎日塾通いで大変じゃない? 」

「大変じゃないって言えば、嘘になるけど、この壁を超える事はこれからの僕にとって不可欠なんだ。」

「不可欠」っていう所の語彙を強めていた。もしかしたら、その言葉に、私の知らない加持君がいるのかもしれない。