硝子戸の外へ。

優しい世界になるようにと、のんびり書き綴っています。

恋物語。98

2021-08-21 21:44:46 | 小説
母との会話によって、自分でも驚く位に泣いて、不安になっていた川島君への想いを取り戻した。しかし、その想いが、みんながよく言う、愛するという気持ちであるのかが分からない。
人生において、大切なものは何かと問うとき、人々は様々な回答をする。
その中でも、愛が、もっとも大切だとしたら、私にとって、愛は曖昧なものでしかないから、いったい何を大切にすればいいのかが分からなくなってしまう。
愛を語る人たちは、どれほど真実の愛を知っているのだろうか。
もし、皆が愛を知っているとするなら、チャペルで、神に愛する事を誓った夫婦が、なぜ離婚してしまうのだろう。
愛を歌った人たちが、不倫をするのはなぜだろう。
それが、愛だからだろうか。だとしたら、愛とは傷つけあう行為なのだろうか。
「真の愛の道は決して平坦ではない」
シェイクスピアはそう言ってたけれど、今の私には、それが理解できない。
川島君への想いは真の愛? 難しく考えすぎ? 好きって言う気持ちは間違いないのに。
私は、どうして複雑に考えすぎるんだろう。
しっかりしろ! 私!

ベッドに寝転がり、天井を見つめる。心配しなくてもいい事まで心配をしている。それもよく分かっている。でも、考えてしまう。
綾乃は、ちゃんと告白できただろうか。川島君は私の事をどう思っているだろうか。
二人がつき合うことになった時、二人に対してちゃんと微笑むことが出来るだろうか。

試験が近いというのに、とんでもない沼に嵌ってしまったなと後悔。しかし、何もしないで後悔するよりは、前向きだ。

ピロロン! 

LINEの着信で我に返る。今は見たくないなと思いながら、重い腕を伸ばし携帯を取る。
画面を見ると、綾乃からのLINE。報告します。で始まる長文。見ないわけにはいかない。
恐る恐るLINEを開くと、そこには、とても悩んだことの分かる、彼女の想いが詰まっていた。