硝子戸の外へ。

優しい世界になるようにと、のんびり書き綴っています。

恋物語。88

2021-08-09 17:26:19 | 日記
「村主さんは、凄く家族を大切にしているよね。時々家族の話をしてくれる時、それを凄く感じるんだ。それは、僕も同じで、両親を大切に思ってる。」

「うん。おじいちゃんもおばあちゃんも父さんも母さんも妹も大切だよ。」

「だよね。村主さんも自分の家庭が出来たら、温かい家庭にしたいって言ってたのがすごく印象的で、すごく優しい子なんだなって思った。」

「そう思ってくれるのはすごくうれしいけれど、私、ぜんぜん優しくないよ。けれど、今の自分があるのは家族があってこそだし、もし、結婚して家庭を持ったら、温かい家庭にしたいなって思うの。」

優しく頷いてる加持君。でも、なぜ? 

「村主さん。突然だけど、僕の住んでいる川下町って、昔、なんて呼ばれてたか知ってる? 」

「川下町? 」

「じゃあ、地区って聞いた事ある? 」

たしか、社会か歴史か人権学習で習った。そうだ。SDGsでも・・・。

「うん。同和問題って人権学習で教わったよ。でも、川下町と、どういう関係があるの? 」

「そうだね。やっぱり、僕らの世代だと、知らない人が多いんだね。川下町って、かつては地区って呼ばれてた町なんだよ。」

「えっ。」

私は、彼の告白に、なぜか、動揺してしまった。加持君は、それが分かったのか、少し寂しそうに笑っていた。