硝子戸の外へ。

優しい世界になるようにと、のんびり書き綴っています。

恋物語。94

2021-08-15 20:33:29 | 日記
「差別とか同和問題って、知らない事の方が多いんだね。SDGsを議題に、生徒会で話し合ったけれど、起源の事なんて誰も言わなかったなぁ・・・。加持君はすごいね。」

「そんなことないよ。ただ、父さんや母さんから、差別を受けた話を聞いていたから、当事者としてよく理解しておかなければって思っただけだよ。でも、SDGsだって、表向きはクリーンに見えるけれど、権力を持つ人たちが言い出した事だから、誰かに不利益が生じるんじゃないかと思ってる。権力者や大人のいう事を鵜呑みにしちゃいけない。自分の頭で考えなければ、「ケガレ」っていう呼称でひとくくりにされた人達みたいに、アイデンティティーを否定され、時代に翻弄されてしまうことになりかねないと思う。」

一口飲んだホットココアの味がしない。私は加持君の言葉にうちのめされてしまった。
彼が、懸命に話してくれたのに、言葉が出てこない。
なにか、言わなくちゃ。

「・・・・・・。加持君。タイムスリップして、時の権力者を正さなければ差別ってなくならないものなの? 沢山の人が、話し合い、理解を深めていると思うのに・・・・・・。」

「そうだね・・・・。時を遡る事は出来ないけれど、先人たちの努力の積み重ねで、少しづつ改善されてきているとは思う。でも、完全に無くなる事はないんじゃないかとも思う。それは、差別と言うものの本質が、学校でのいじめや、SNS上での誹謗中傷と同義だと思うから・・・・・・。もし、この世界から差別をなくそうとするなら、ちょっと難しいかもしれないけれど、僕たちや、ずっと年下の子達や、これから生まれてくる子たちが、いじめなんて無意味なんだという価値観を獲得できれば、その時、初めて、お互いが自由を認め合う社会になるんじゃないかと思う。」

自然と涙がこぼれてくる。私はなんて浅はかな人間だったんだろう。