鬼山竜也の住宅業界 商売の王道

良い家づくりに真剣に取り組んでいる方々が、お客様のためにより良い仕事が出来るようになるためのヒントになれば、嬉しいです。

【第344回】 マニュアルを超える思いやり

2011年12月10日 | 住宅コンサルタントとして
家1軒が完成するまでに、いろんな人がいろんな仕事をする必要があります。

全ての人が、同じ情報や統一の基準を持つために必要なのが、図面です。

この図面が完璧であれば、基本的に現場では図面通りにつくっていけばいいので、
ミスが極端に減ることになります。

しかしながら、図面をつくるのも人間なわけです。

人がおこなう仕事でも、機械がおこなう仕事でも、ミスやフリーズは必ず発生するのです。

だから、私個人的には、「図面通りにつくればいいんでしょ!」という考え方が
現場監督や職人さんの間に広がることは、非常に危険だと思っています。

現場監督や職人さんは、図面を疑って仕事をする。
設計側は、図面に明記したからといって、それで監督や職人さんに全てが伝わるとは思わない。

こうしたいい意味で疑うことが、住宅業界で働いていく上で、とても大切なことではないかと思います。

なぜ、私がこんな考え方になったかというと、それは前前職時代に苦い経験をたくさんしたからです。

設計事務所が間に入って、ゼネコンが入札で落とす物件で、
積算のために図面をいただくことが、何度もありました。

しかしながら、設計事務所の描く図面が、本当にいい加減なのです。

平面図と立面図、建具表の数が一致しない。
制作範囲を大幅に超える寸法のサッシや建具が表記されている。
納まりようのない納まり図が描かれている。

そんなことが、ほぼ100%あったのです。

また、はじめてお仕事を一緒にさせていただく工務店さんやゼネコンさんも、
まあいい加減な人がたくさんいました。

事前に監督さんと打ち合わせをさせていただいて、納まり等について図面までお渡しして
説明しているのにも関わらず、その図面をまあ見ていないのです。
その結果、間違って施工されたり、現場から確認の電話が何度も入ったり、
ということが、山のようにありました。

こちらが、こちらの立場でちゃんとした仕事をしても、相手がちゃんと仕事をしてくれなければ、
結局現場やお施主様が困ることになってしまう。
しかも、そのフォローで自分の時間も多大に奪われてしまう。

だとすれば、図面や資料に頼らず、工事前に携わるスタッフが全員一堂に集まり、
そこで顔と顔を突き合わせて、図面と言葉で確実に伝えることが、最も確実なのだ、と。

そこで、そうした仕事の進め方にしたところ、現場の職人さんや監督さんから
電話をガンガンもらうことが、圧倒的に少なくなりました。

メーカー側の理屈で、「事前に資料を渡していますから・・・」ということが
通用しないのが、建築現場なのです。

そして、トラブルの結果、最も困るのは、間違いなくお施主様なのです。

お施主様を困らせることが無きよう、
そしてお施主様に家づくりを頼んで良かったと思っていただけるような仕事をすることこそが、
仕事の目的であるはずです。

「私は決められた通りにやっていますから・・・」というような、
くだらない発想をしている時点で、本当に良い仕事は出来る訳もありませんし、
自分自身の成長も止まってしまうでしょう。

「マニュアル通りにちゃんとやっていますから・・・」という自分本位の仕事の進め方をしていませんか?
本当にお客様のことを考えて、仕事をすることが出来ていますか?
コメント
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