近所の方から鯛を貰った。「今朝、親元の兄が仕掛けた網に入っていたので」と届いたばかりのもの。これほどの大きさを買ったことはないし、これからも買うことはないと測ってみた。全長50センチある。重さは我が家の台所用では計りきれない。
夫婦二人では食べ切れない。新鮮なうちにお裾わけ、と魚のさばける人の家へ氷を詰めたハッポースチロールの箱に入れ直行。すでに包丁を出して待っていてもらった。
検体をするかのように鯛を見ている。尻尾の付け根の付近にある切り傷を指し、さばき始めた。訳を聞くと「この切り傷と頭のところのシメて魚が硬直しないですんでいる」そう言いながら、持ち上げて振って見せる。確かに尻尾が揺れ「鯛調」は柔らかだ。硬くなっていない。
魚の小売店が無くなってひさしい。今は必要なとき必要なだけスーパーで買う。大方の場合手が加えられている。家事をする者には楽になっている。しかし、魚を美味しく食べてもらうために、店頭へ出されるまでには相当の工夫や経験が生かされているのだろう、包丁を使う手元を見ながら思っていた。
海で一生を過ごすのか、より大きな魚に食されるのか、人の食卓にのぼるのか、そんなことを思うと生きタイといっているようないい目つきをしている。
(写真:貰ったタイの大きさに驚き)