ニュースは朝から熱中症注意を呼びかける。数日前に「元気よ」という声は聞いているが、孫の住むところは連日、猛暑日の気温と全国ニュースで流れる。
数人の男の子らが同じような虫捕り網を持ち、首に虫籠を掛けて桜の木を見上げながら移動している。声を掛けると籠を覗かせてくれる。一番小柄な子を除きその中ではセミ数匹がもがいている。桜の木の葉は茂っていて鳴き声の数ほどセミの姿は見えない、そう言いながら桜の木を移動している。報道では出合えない昔懐かしい様子を眺める。
そんな子らを見ながら、自分があの頃に老いることなど思ったこともなかっただろう。しかし、願いもしないのに時間はいつの間にか60歳の定年にし、やがて後期高齢者にしてしまう。これからも途絶えることなく時は刻み続ける。老いに向かうことは止められないが、心身を老け込ませないための情報は世の中にあふれていて、どれを選ぶか惑う。
論語に「三十にして立つ、四十にして惑わず、五十にして天命をしる、六十にして耳順がう、七十にしてこころの欲する所に従って矩を踰えず」とある。思いのままに動いても「矩を踰えず」の歳に達している。だが耳順がう(みみしたがう)を超えていないことを反省せよとセミの鳴き声が諭す。