
「弄る(いじる)」は広辞苑で1番目は手でもてあそぶ、手なぐさみをする、2番目はいじめる、なぶる、最後の3番目は確かな方針や目的もなしにあれこれと手を加える。弄られる側からすれば思いのままにされていることとなり甚だ迷惑なことになる。陶芸同好会に誘われて10年になる。この間を思い返し反省すると「粘土にはすまないことをして来た」の短いひと言になる。
「世界でひとつだけの作品つくり」という知人の勧誘で入会した陶芸同好会、いまだに同じものは2つ作れないから勧誘文句に偽りはなかった。粘土は軟らかく手で自由に扱え、鉄や木材のように切る、打ち込むなど器用さは不要と思い気易く入会した。何度か参加するうちに、作ることにおいて素材の硬軟などは無関係であることがよく分った。
自由作品の日、何を作るか問われて「完成してみないと」と答える。例えば茶碗のつもり小鉢に、ぐい飲みのつもりが小さめの湯呑に変身するといった具合、ふざけてはいないが結果として「粘土にもて遊ばれている」。決めた作品を忠実に完成させる仲間は勿論いる。ほどほどに出来上がると「作った」と感じる。
同好会の良さは作品の完成度ばかりではない。竹細工に優れた人、手芸は玄人に負けない人、手先の器用さが発明に結び付く人、写真のためなら朝3時起きもする人など、作品を作りながらの話しは参考になる。仲間の作品評に比べ指導員のそれは柔らか。それは祖父母のような会員に長く陶芸を楽しませる暖かい心遣いだろう。