
「後期高齢者、その表現がどうも気に入らん」と、粘土をこねながらある人のひと言。そうなる話の始まりは何だったか定かでないが、腹に据えかねることでもあったのかもしれない。傍から「やがて次は超高齢者と呼ぶことになっている」と情報が伝わる。高齢者層ばかりの陶芸同好会、お上の決めた表現から解き放されることはない。
そんな高齢者ばかりでも昼食は楽しみ。創作室の時計が正午前になると「弁当に行こう」「昼にしよう」と誰からともなく誘いあう。施設の食堂利用を停止して、手弁当になって数カ月すぎて定着してきたようだ。大昔と違い弁当調達先はあちこちにあり、選択肢は多い。勿論、家からの手作り弁当持参者も多い。
弁当を広げるのは施設の3階。広いガラス戸の向こうには穏やかな瀬戸内海の島々が浮かぶ。良く晴れた日には四国の石鎚山が遠望できる。ガラス戸の下は断崖でその先は秋から冬へ模様替え中の木々が続く。弁当を食べるには申し分ないロケーションだ。
食べ終わってゆっくり語る人、急いで創作室に戻る人、その日その日でいろいろ。食堂のおそろいを食べるのもいいが、弁当を開くと昔を思い出し、気持ちは少しだが年齢が下がる。先日、弁当のいくつかを会のブログにアップしたところ、それが転載されて驚いたが、和やかな同好会が醸し出されているようでよかった。