何年か前の川土手法面での話しから。鎌を使って腰くらいに伸びている雑草を刈っている人を見かけた。こうしたところの草刈りは除草機を使うのが当たりまえだろうと思いながら「綺麗になります」と声を掛け、「鎌ですか」と問うた。手を休めて「ヤギの餌にするため刈っております」という答え。聞くとヤギが好んで食べる草を刈っているという。
その草は、子どものころに遊んでいた草で「てっぽう草」と呼んでいたが、正式な呼称は今も知らない。てっぽうのいわれはこうだ。手の親指と人差し指で輪を作る。そこにてっぽう葉を置き、葉の中央部分を指で軽く押さえ窪みを作る。指の輪を作った反対の手のひらで窪みの上を思いっきり叩く。その時、輪を作って手が下がらない力を入れて支える。
叩かれた窪みは「パン」という音を発する。叩いた手をのけると、草の葉の真ん中に穴が空いてる。パンという音は押された空気の圧力で穴が空く。空気が逃げ去った跡になる。誰の音が大きいか、そんなことを競い合った。遊びの道具などない朝鮮戦争勃発より前の古い古い話し。
「ヤギにこの草(てっぽう草)を食べさせると乳がよく出る」と教わった。飼育したことはないが、鎌を使われる姿から幸せなヤギだと思った。散策道のある1カ所に不思議なほどの面積で茂っているてっぽう草を見て思い出した。
(今日の575) 雑草も遊びのためにゃ工夫する