a letter from Nobidome Raum TEE-BLOG

東京演劇アンサンブルの制作者が、見る、聞く、感じたことを書いています。その他、旅公演や、東京公演情報、稽古場情報など。

批評対話2011 3日目 イソップぬちぐすり/アートインAshibina

2011-08-03 12:01:20 | The Play for Children & Young People



イソップぬちぐすり/アートインAshibina/代々木オリンピックセンター・リハーサル室

脚本・演出 西田豊子

出演 佐藤大 下川瑠美 翼純子 高橋秀明


例のごとく、
まず最初にWhyについて。
劇の背景を知りたいことと、なぜこの作品を選んだのか、ということ。

今回の上演は、
イソップの童話の中から、
4つの物語が展開するオムニバス。
数ある童話の中から、
なぜ、この4作品を選んだのか、
ということからはじまった。

それに対して、
テーマとして、いかに生き抜くか、
命の絶壁のやりとりがあるような作品を選んだ。
そして、あまり知られていないもの。
また、小さい子たちから見られて、
大人にもきちんと味わい深く伝わるもの。
緊張感のあるテーマを、
ユーモラスに簡潔に伝えられるもの、
という答えでした。

次に、デンマーク人講師から、
では、この4つの作品は、
なぜこういう並びと、つながりにしたのか、
という質問。
つまり、1つ目と2つ目の作品では、
作品のチェンジが行われるが、
3つ目と4つ目のつながりは、
前を引きずっているというか、
変わり方がそれまでとは違っていた。
その意図がなんなのか、という質問だ。

これも、この3日間デンマーク人講師がこだわっている、
意識下で行われていることなのか、
無意識下で行われていることなのか、ということ。

この作品は、
導入部やつなぎの部分で、
観客と同じレベルを共有するものが提示される、
そこから、物語に入っていくのだ。
言ってみれば、
俳優が2つのレベル(質ではなく)の演技をしていることになる。
そこで、講師が聞いているのは、
全体を通して意図する第3のレベルの意識したものはないのだろうか、
ということでした。

これについては、
まだ、そこまで作品が成熟していないということで、
挑戦している段階にあるということが話され、
それは、また、作品の未知の可能性を感じることでもあった。

そして、Howについて。
簡素化された舞台の中で、
使われた道具は脚立のみ。
その脚立を様々なものに見立てて使っている。
例えば、エレベーターはないが、
火は本物らしいものは使われている。
その選択についてが質問された。
それに対して、
平面で奥行のあまり舞台で、
高さの違いがほしかった。
それに脚立を使った。
想像力に委ねる部分と、
具体的に提示する部分、
迷いに迷って、今選択しているのがこれ、
という、何とも潔い答え。
ほかの可能性を考えつつも、
今の、全体のプロポーション、
俳優との共同作業の中で、そういう選択をしたのだろう。

また、もう一つ、この作品で語るべきは、
時間のジャンプについて。
イソップの童話そのものは、古典ともいえる作品群であるが、
表現の中に、
例えば、メールや携帯など、
現代的な表現が使われていることがある。
その選択についての質問がされる。
これには、
観客との距離が近づくかな、と。
エンターテインメント的な要素として、
舞台と観客を近づけるためのジャンプを使った。

その答えを聞いて、
デンマーク人講師が言っていたことがとても印象的だった。
「まずは、アーティストの選択に敬意を表しましょう」
この一言は、
非常に示唆に富んで、
いろいろな意味で励まされるものだった。
そう、いつでも作品創作には選択の瞬間がある。
自信を持ってできる場合もあれば、
その選択が、挑戦的である場合もある。
そしてそれが、必ずしも観客との合意が得られるわけでもない。
演出家や、俳優は、
常にその狭間を揺れながら、作品創作を続けていくのだ。

最終日の『批評対話』では、
作品の構造の問題。
そして、様々な選択についてが語られた。