こんにちは、今回のブログ担当は奈須弘子です。
今年の稽古はこの『揺れる』から始まりました。
新しく作品に取り組む時、特に今回は、今まで過去の作品の中でできなかったことを取り戻すかのように、あの時のこれができなかったなーとか、あれはああだったのかなーとか、今の自分にはこれが足りないのかなーとか、
なんだかごちゃごちゃ感慨に耽りながら始めましたが、そんなものバンバン捨てられないと、始められないように感じる今日この頃(初日1ヶ月と1週間前)。
私は役者として経験したことはありませんが、きっと『走れメロス』をやっているような感覚-なりふりかまわずとにかく走る、全速力で、残りの体力考えず(笑)。
そこから生まれてくる真実の感情。
ただ言葉がそこにある。
俳優が演技することを拒否するような、“らしさ”を表現して見せようとしてしまう気持ちが少しでも混じってしまうと、嘘だろう、オイ!と脚本から突っ込まれそうな…
そして『揺れる』は、いつまでも謎だらけの脚本です。
夢なのか、現実なのか、
ゲームなのか、空想なのか、
現実はどれ? これはいつ?
そして誰?…
誰にもあてはまることで、誰にでもありうること、おこりうること。
でも読んでいて沸き上がってくる自分の感情が、嘘だろう、ソレ!と突き放されてしまう。
人びとは何を見るのか。
眼に飛び込んでくる活字からのイメージの強さ。
稽古の中で、ひとつの単語のイメージが日々変化していく。
ほんの短い会話のやり取りが急に色を変える。
昨日やったことは、もう今日には通用しないような。
もちろん、人間そんなに簡単に変化できるわけではないけれど、
しかし、誰かのたった一言の変化でガラリと流れが変わる可能性の高い言葉の並び。
なんともスリリングでライブな脚本。
先日、翻訳者である高橋文子さんが稽古場にいらっしゃって下さいました。
高橋さんに台詞の一部分をドイツ語で読んで頂きました。
私の中ではドイツ語は強い響きというイメージがありましたが、なんとも柔らかな響きでポエジーでした。美しかった。
私たち15人で奏でるハーモニーはどうなるでしょう?
劇場で一緒に体感して揺らして下さい!
「生きるとは、息をすること。存在すること、考えること。深く考えること。自分のこと、他人のことを。」
人類の夢と現実ー。
何故だか元気になる作品です。

